2006 Fiscal Year Annual Research Report
心理的変動が運動スキルに及ぼす影響に関す脳神経科学的研究
Project/Area Number |
16300206
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大築 立志 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (30093553)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
工藤 和俊 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助手 (30302813)
村越 隆之 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教授 (60190906)
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Keywords | 心理的プレッシャー / インターセプティヴ・タイミング / ターゲットキャッチング / 課題要求度 / fMRI / 前頭前野 / 扁桃体 / 補足運動野 |
Research Abstract |
本年度は、被験者の心理的状態を変動させる課題達成に関する要求度の違いが、課題動作の正確さに与える影響を、インターセプティヴ・タイミング課題(移動する標的を指定位置でキャッチするターゲットキャッチング課題)を用いて検討した。 実験課題は、本研究費で作製した移動視標呈示装置によってコンピューター画面上を左から右へ一直線に一定速度で動く視標(ターゲット)が、ある特定の位置に到達する時刻に、その位置を通り移動コースと直交する軌道上を移動するカーソルで素速く視標を捕捉することである。カーソルの移動距離は、等尺性握力によって線形制御し、スタートから視標補足地点までのカーソル移動距離が10%MVCとなるように調節した。被験者の心理的プレッシャーを操作するため、Pressure条件(高課題達成要求条件:ターゲットとカーソルの指定位置到達に関する時間的誤差と空間的誤差を得点に換算し、セットごとに予め指定した基準得点を上回ることができたら獲得得点を2倍にし、下回ったら得点をゼロにする)とControl条件(低課題達成要求条件:獲得得点がそのまま得点となる)を比較した。 解析の結果、Control条件に比べてPressure条件では、失敗セットにおける不安レベルが高く、力の誤差が大きいが、タイミング誤差は小さいことが明らかとなった。 同じ装置とプロトコルを使って、この課題遂行時の脳活動をfMRIを使って検討した結果、Control条件に比べてPressure条件では、扇桃体および補足運動野の活助が亢進し、前頭前野下前頭回の活動が低下していることが明らかとなった。 以上のことから、ターゲットキャッチング課題においては、高い心理的プレッシャーや強い不安は、前頭前野による時間記憶のワーキング・メモリー機能を低下させ、その結果視覚刺激に注意が集中して力発揮のコントロールが乱されるという、運動の計画立案過程の変容が生じることが示唆された。
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