Research Abstract |
ヒトを対象とした筋生検は医学的には必ずしもその難易度が高いわけではないが,被験者の侵襲度を軽減する目的で微量サンプルに対応した分析方法や筋生検方法の改善などの基礎的手法を確立することは,今後の研究の展開上重要な問題である。そこで,本年度は,年齢,性,トレーニング状態など様々な対象にあわせて,筋生検が与えるダメージの大きさについて検討を行い,同時にヒト骨格筋における安静時HSP発現量を横断的に検討した。 筋生検は,全15名に対して行った。その内訳は,男性12名,女性3名であった。また,年齢は20歳代10名,30歳代2名,40歳代2名,50歳代1名であった。また,うち5名は左右脚で筋生検を行った。いずれの被験者も,パンチ式のニードルでの筋生検を複数回行った。得られたサンプルは,凍結保存後,ウェスタンブロッティングによってHSP70およびSDS電気泳動によるミオシン重鎖組成が定量された。 その結果以下の点が明らかとなった。 1.一回当たりのサンプル回収量は,最低5mg,最大12mgであり,1回のサンプリングでもHSP70分析に対して十分な量が確保できる。 2.筋生検後の痛みには個人差があるが,連続2-3回の生検では,痛みはほぼ1-2日以内に消失し,日常生活に支障を与えない。また,ふだんトレーニングを行っているものでは,直後の筋力トレーニングや翌日の通常の持久的トレーニングにおいても特別な支障を与えない。 3.ストレス蛋白質の安静時発現には,大きな個人差があるが,その一部は筋線維の組成によって説明できるかもしれない。 4.サンプル数が少ないが,顕著な性差,年齢差は認められない。また,本生検方法によるHSP70発現量に左右差は認められない。
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