2005 Fiscal Year Annual Research Report
未利用天然資源の有効活用による地球環境に優しいアパレル加工製品の開発
Project/Area Number |
16300234
|
Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
中島 照夫 近畿大学, 資源再生研究所, 教授 (70088201)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
賓 月珍 奈良女子大学, 人間文化研究科, 助手 (90343269)
|
Keywords | キチン・キトサンフィルム / 抗菌防臭加工 / 抗菌活性 / 生分解 / フィルムの成形加工 / 力学的性質 / 未利用天然資源 / 制菌加工 |
Research Abstract |
多くの合成高分子材料は安定性に優れているがゆえに生態系を乱し、重大な環境破壊を招く危険性を持っている。本研究は、使用時の利便性のみならず、製造段階からライフサイクルアセスメントを行い、不用になって廃棄された場合の自然環境に対する負荷を十分考慮し、未利用天然資源を再利用して物質循環系に取り込まれる分解可能な製品をめざし、生分解及び抗菌性の相反する特性を有する材料を開発するため、天然高分子材料と生分解性能を有する合成高分子材料をブレンドする方法を見出し、その複合材料の物性や抗菌性および生分解特性に関して検討した。 平成17年度は16年度に引き続き、未利用天然資源のキトサンを四級化し、PVAの結晶性高分子に四級化キトサンを混入した複合ゲルフィルムの成形加工法を開発した。キトサン/PVA複合フィルムの延伸倍率は、キトサンフィルムより延伸特性が優れ、40/60で3倍、22/78では7倍にも達した。未延伸フィルムの貯蔵弾性率(E')は、PVA含量が減少するに従って増加した。損失弾性率(E")のピークは、30〜50℃の範囲内で高くなった。(E')の値は、延伸操作に従ってPVAとキトサン結晶の優先的な方向づけが伸長によって顕著に増加した。ヤング率は22/78の7倍延伸で20GPaに到達した。この結果は市販材料として利用できる可能性を示唆した。広角X線回折より、PVAのみからの回折が見られ、延伸によりPVA分子鎖が延伸方向に配向した。キトサンからの有意な回折は認められず、結晶化度が低いことが判明した。キトサンフィルムはDSC測定でブロードなピークが90℃付近で見られたが、PVA含量の増加に従ってそれは見られなくなり、融点の減少傾向が示唆された。延伸で融解ピークが高温側にシフトし、高くなる傾向を示した。 キトサン/PVA複合フィルムの抗菌性は、キトサンフィルムと同様にEscherichia coliがStaphylococcus aureusよりも低かった。特にこの傾向は中和フィルムで顕著であった。抗菌性は四級化キトサンの配合で向上し、中和しても抗菌効果が極端に低下しなかった。四級化キトサンの配合は、抗菌性向上に寄与し、従来の抗菌剤よりもマイルドで安全性が確保でき、PVAを配合することによって延伸特性が向上し、複合材料としての市場性の拡大が期待される。 未延伸のキトサン(100/0)フィルムの重量減少は、赤土土壌と比較して水田土壌で3.5〜4.4倍高く、SEM観察でスポンジ状に大小多数の穴が開いた形跡が確認できた。この傾向は延伸倍率と土壌埋没初期及びPVA含有量の低い試料で顕著な差が現れた。重量減少はPVA含有量の増加に伴って低下し、生分解速度が鈍った。PVA(0/100)フィルムは埋没13ヶ月後でようやく肉眼観察で穴が開いた形跡を確認できた。キトサン/PVA複合フィルムの生分解は、始めキトサン領域の分解が進行し、その後PVA領域の分解が進行することが示唆された。重量減少は、PVA含有量と土壌の種類及び延伸倍率に依存した。生分解速度は高延伸倍率の試料で鈍くなった。キトサン分解菌(Sphingobacterium multivorum)は土壌から分離できたが、残念ながらPVA分解菌は分離できなかった。PVAは生分解可能な合成高分子と言われているが、土壌埋没3〜8ヶ月後ではキトサン/PVA複合フィルムは殆ど分解せず、通常の土壌中では分解速度が極めて遅かった。複数の微生物による相乗効果を検討したが残念ながら見出すことはできなかった。 これらの成果は、チェコの高分子化学研究所で開催された2005プラハ高分子に関する討論会、高分子学会、日本家政学会、日本防菌防黴学会で発表し、J.Home Econ.Jpn(Vol.56,No.12)、Biocontrol Science(Vol.11,No.1)に報告した。
|
Research Products
(2 results)