Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 良茂 金沢大学, 自然科学研究科, 教授 (60019750)
佐藤 努 北海道大学, 大学院工学研究科, 助教授 (10313636)
鎌田 直人 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 助教授 (90303255)
田崎 和江 金沢大学, 自然科学研究科, 教授 (80211358)
早川 和一 金沢大学, 自然科学研究科, 教授 (40115267)
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Research Abstract |
ナホトカ号事故による多環芳香族炭化水素類(PAHs)の汚染に関しては,現在ではほぼバックグラウンドに近いところまで汚染が回復していることが分かった.残留重油は,岩の窪みなど,一部に存在している程度である.ただし,残留重油中のPAH濃度は,事故後7年後でも2年後とほとんど変化はなく,重油の形で残っている場合は,長期にわたってPAHsが存在し続けることになることが分かった. 金沢市の主要河川犀川,浅野側の数値点および河口域での3年間にわたるモニタリングの結果,河口域,沿岸域でのPAHsの挙動について,以下のことが明らかとなってきた. 河口域の河川水と,底質(表層)のPAHs濃度を2年間にわたり測定した結果,河川水と表層部の底質の間には,擬似的な平衡関係が見られ,少なくとも表層底質と河川水との間では,物質の交換がかなり早いということが明らかとなった.また,底質の有機物含有率が分配の支配因子であり,底質有機物当りの分配係数Kocは,オクタノール・水分配係数Kowとよい相関が見られた.すなわち,線形自由エネルギー説がここでも成り立ち,この河口域での水と底質の間の分配挙動については,おおよその挙動予測をすることができる. 河川中の浮遊固形物質(SS)と水との間のPAHの分配係数Kdについても,平均値とがオクタノール・水分配係数Kowとの間によい相関が見られた.SS濃全PAH濃度との間には明確な相関はなく,底質に溜まっているPAHがSSとともに大量に流出することは考えられない.固液間の分配に関して,溶存有機物質の存在により,平衡は液側に移行し,環数の多いPAHほど,その影響を大きく受けることが明らかとなった. 以上のように,この河川系における分配と輸送の挙動について,ある程度予測ができるだけの知見が蓄積された.
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