2006 Fiscal Year Annual Research Report
本邦河川水質の現況と生活・産業・水理構造の変化による近過去からの変容
Project/Area Number |
16310010
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉山 雅人 京都大学, 大学院地球環境学堂, 教授 (10179179)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀 智孝 京都大学, 大学院人間・環境学研究科, 教授 (40108981)
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Keywords | 河川水質 / 水理構造 / 溶存化学成分 / 懸濁化学成分 / 物質循環 |
Research Abstract |
2005年4月から運用が開始された新設ダム湖、奥津湖(岡山県鏡野町、苫田ダム)でのシリカ貯留と水質変動に関する連続観測を行った。その結果、現時点では奥津湖において顕著なシリカ貯留は起こっていないことが分かった。この理由としては、(1)奥津湖には、Siを極端に消費するほど珪藻が大増殖できるだけのPが供給されていない、(2)奥津湖に流入するSi量が多く、たとえ湖に貯留効果があったとしても、貯留量は相対的に小さい、の2点が考えられた。しかしながら、Pの供給次第で珪藻が増殖する可能性はあるので、今後とも栄養塩動態を監視する必要性が示唆された。 一方、ダムの設置は、微量元素の動態には大きな影響を及ぼしていた。最もそれが大きかったのはMnであった。夏季の奥津湖では、水深の増加とともに溶存酸素濃度が減少したが、堆積物直上でも完全には涸渇していなかった。しかし、Mn濃度は底層において極端に高くなっており、Mn溶出が認められた。冬季には、この高濃度の底層水が湖内を循環するため、湖全体にその影響が及んだ。このため、ダム放流水のMn濃度は、冬季に正のピークを描くように高くなった。 Mnの挙動に伴って、アルカリ土類金属元素の動態も変化していた。これらの元素は、Mn酸化物に吸着して湖内を沈降し、その一部が水相から除去されていると見られた。特に、Mn酸化物への吸着が強いBaの変化が顕著であった。 こうした化学的な変化に加え、物理的な貯留効果も観測された。流出水中の懸濁態AlおよびSiはダム設置を境に減少し、濃度変動も緩衝されていた。これは、下流に対する土砂の供給が滞っていることを意味しており、ダムは砂浜減少といった形で遠く河口域の海岸線にまで影響を及ぼすとの指摘を裏付ける結果となった。
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Research Products
(1 results)