2004 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝的指標を用いた魚類個体群に対するストレッサーの同定と生態影響評価に関する研究
Project/Area Number |
16310023
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
益永 茂樹 国立大学法人横浜国立大学, 大学院・環境情報研究院, 教授 (50282950)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中井 里史 国立大学法人横浜国立大学, 大学院・環境情報研究院, 助教授 (70217644)
花井 義道 国立大学法人横浜国立大学, 大学院・環境情報研究院, 助手 (00114984)
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Keywords | 遺伝的多様性 / AFLP / モツゴ / ストレッサー / 生態リスクアセスメント / 絶滅リスク |
Research Abstract |
魚類は生息環境の物理的因子や化学物質等の多種多様なストレスを受けているが、地域個体群の存続性に関与するストレッサーの推定や、そのストレッサーによる個体群絶滅リスクの評価は困難な課題である。そこで、本研究ではAmplified Fragment Length Polymorphism(AFLP)手法を用い、地域個体群集団内の遺伝的多様性を測定し、その結果からストレッサーを推定する手法と個体群の地域的絶滅リスクの評価手法の開発を目指している。本年度は、遺伝子多型の分析法を確立し、ストレッサーの推定を行った。 魚のヒレの微小片から抽出したDNAをジェネティックアナライザー(GA)で測定してDNA多型パターンを得、集団内類似度に換算した。GAにより高感度なパターンが得られる半面、再現性は低下した。しかし、裾切りを導入することで不安定要素を除外でき、十分な再現性が得られることを確認し、DNA多型の測定手法を確立できた。 次に本法を用いて関東地方のさまざまな水域に生息するモツゴの集団内類似度と、生息域の水及び底質中の汚染物質濃度を測定し、それらの間の関係を検討した。その結果、多環芳香族炭化水素であるbenzo[k]fluoranthene(BkF)濃度と集団内類似度との間に有意な相関が得られ、遺伝的多様性に対する主要なストレッサーである可能性が示唆された。さらに、DNA多型パターンをクラスター分析した結果、モツゴ個体は大きく4つのジェノタイプに分類され、その一つがBkF濃度の上昇につれて集団内で優占することが示された。さらに、農薬などの生息地特有のストレッサーの存在も示唆された。 以上から、AFLP法による遺伝的多様性解析とジェノタイプ分類により、広域的なストレッサーとしてBkFが、地域特有なストレッサーとして農薬が抽出され、これらがモツゴの遺伝的多様性に対する影響因子である可能性が示唆された。
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Research Products
(1 results)