2005 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝的指標を用いた魚類個体群に対するストレッサーの同定と生態影響評価に関する研究
Project/Area Number |
16310023
|
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
益永 茂樹 横浜国立大学, 大学院・環境情報研究院, 教授 (50282950)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中井 里史 横浜国立大学, 大学院・環境情報研究院, 教授 (70217644)
花井 義道 横浜国立大学, 大学院・環境情報研究院, 助手 (00114984)
|
Keywords | 遺伝的多様性 / AFLP / モツゴ / ストレッサー / 生態リスクアセスメント / 絶滅リスク / 多環芳香族炭化水素 / ジェノタイプ |
Research Abstract |
数十年レベルの長期間の生態系保全を行うためには、化学物質や物理化学的因子等の環境中の多種多様なストレッサーの中から生物個体群に大きく作用するストレッサーを抽出し、その影響の大きさを評価する必要がある。そこで、本研究では過去に報告したAFLP手法を適用して、関東地方の異なる水系の17のモツゴ個体群を対象に、種内の遺伝的多様性を評価した。さらにそれら個体群の遺伝的多様性に大きな影響を与えていると考えられるストレッサーの抽出及びその大きさの評価を試みた。 その結果、関東地方に生息するモツゴ個体群内の遺伝的多様性は生息地によって大きく異なることが明らかとなった。また、過去に大量斃死した生息地の個体群の遺伝的多様性は非常に小さいことが明らかとなった。遺伝的多様性が生息地によって大きく異なる原因を推定するため、モツゴ個体をDNA多型パターンに基づき複数のジェノタイプに分類した結果、ジェノタイプと生息地の水質や物理的環境との間に関連性が明らかとなった。この関連性から、関東地方のモツゴ個体群の遺伝的多様性は、農薬や水涸れ、移入困難といった地域特異なストレッサー及び多環芳香族炭化水素といった広域的なストレッサーから影響を受けていることが示唆された。 さらに、広域的なストレッサーとして推定された多環芳香族炭化水素について、その水中の溶存態濃度と個体群内のジェノタイプの組成を検討した結果、濃度の増加とともに個体群内で優占するジェノタイプ及び濃度の減少とともに優先するジェノタイプの存在が明らかとなった。これらのジェノタイプは多環芳香族炭化水素に耐性の強いジェノタイプ及び感受性の強いジェノタイプであることが推測された。 これらの結果は、モツゴ個体群の地域的絶滅リスクを遺伝的多様性や特定ジェノタイプの優占度合いで評価できる可能性を示唆しており、貴重な結果と考えられた。
|