2006 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝的指標を用いた魚類個体群に対するストレッサーの同定と生態影響評価に関する研究
Project/Area Number |
16310023
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
益永 茂樹 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 教授 (50282950)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中井 里史 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 教授 (70217644)
花井 義道 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 助手 (00114984)
亀田 豊 独立行政法人土木研究所, 材料地盤研究グループ, 専門研究員 (60397081)
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Keywords | 遺伝的多様性 / AFLP / モツゴ / ストレッサー / 生態リスクアセスメント / 絶滅リスク / 多環芳香族炭化水素 / ジェノタイプ |
Research Abstract |
異なる生息域のモツゴ個体群を対象に、個体群内と個体群間の遺伝的な違いをAFLP法により調査し、遺伝的多様性に影響を与える環境ストレッサーの抽出を試みてきた。昨年度までに、個体群内の遺伝的多様性は生息地によって異なることや、過去に大量弊死を経験した個体群内の遺伝的多様性は小さいことを明らかにした。さらに、モツゴ個体群内の遺伝的多様性とその生息環境との関係の解析から、多様性が、水涸れ、移入の困難、および、農薬の流入などの地域特異的ストレッサーに加え、多環芳香族炭化水素化合物(PAH)汚染の影響を受けているとの示唆を得た。特に、PAHの濃度と共に、個体群内で優占する遺伝子タイプが変化することが示唆された。 これらの結果に基づき、18年度は遺伝子タイプとPAH耐性との関係を検討した。二箇所の生息地のモツゴを用いフルオランテン(Flt)に対する半数致死濃度(LC50)を求めたところ、水元公園[Flu濃度72.6mg/L]を生息地とするモツゴは、野川[同、20.3mg/L]のものより有意にLC50が高かった。さらに供試したモツゴをAFLP法により遺伝子タイプに分類したところ4種に分かれ、水元公園のモツゴはタイプIVが約80%を占めたのに対し、野川のモツゴではタイプIが10%、IIが32%、IIIが15%、IVが40%と構成が異なっていた。また、ジェノタイプ別のLC50値を算出したところ、タイプIVが69.3、IIIが37.2、IIが18.2mg/Lで、タイプIVとFlu耐性との関係が示唆された。この結果は、地域個体群の遺伝子タイプの構成がその地域のPAH汚染に支配されている可能性を示唆する興味深いものである。しかし、多数の生息地から採取したモツゴの遺伝子タイプと生息地のFlu濃度との関係からは、タイプIVの割合の高い生息域のFlu濃度はむしろ低め傾向が観察され、毒性試験から得た結果との一致は見られなかった。
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Research Products
(2 results)