Research Abstract |
1倍体生物で観察される突然変異の由来と2倍体生物で観察される突然変異の由来を明らかにするために1倍体生物として、大腸菌及びhaploid酵母を、2倍体生物の代表として、diploid酵母を対象とする実験系を先ず作成した。大腸菌の場合、tonB遺伝子を標的とする実験系は既に作ってある。我々はこのシステムに,ミスマッチ修復欠損とDNAポリメラーゼ欠損及び,損傷乗り越え複製酵素欠損の株を作成した。酵母のCAN1遺伝子を実験対象とする酵母の突然変異検出系に,損傷乗り越え複製酵素の遺伝子,rev3及びrad30の欠損株を作成した。先ず大腸菌では,ミスマッチ修復系としては、従来から知られているmutHSLのほかに、polA(Fen1)及びpolA(Klenow)もミスマッチ修復系として機能することを明らかにした。他方,大腸菌乗り越え複製酵素は,自然突然変異の生成にはほとんど関与しない。大腸菌DNA複製酵素IIIはミスマッチ系が機能しない場合は,10^<-6>の頻度で誤りを生じ,ミスマッチ系が働いて,10^<-8>まで下げていることを示した。酵母の場合,組み換え遺伝子rad52の欠損は,塩基置換変異を多発する。損傷乗り越え遺伝子rev3の変異は,組み換え頻度を上昇させる。従って,自然DNA損傷があると,複製フォークが停止し,rad52経路に行けば組み換えによって修復し,従って突然変異も低いままで,rev3経路が働くと突然変異が上昇する。即ち,自然突然変異は,自然塩基損傷による複製阻害の回避に依存して生じるというモデルを提案した。
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