2006 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子欠損マウスを用いたゲノム情報維持の分子機構に基づく変異原性の評価系の開発
Project/Area Number |
16310043
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Research Institution | KYUSHU UNIVERCITY |
Principal Investigator |
續 輝久 九州大学, 大学院医学研究院, 教授 (40155429)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中津 可道 九州大学, 大学院医学研究院, 助教授 (00207820)
早川 浩 福岡歯科大学, 歯学部, 教授 (70150422)
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Keywords | 遺伝子 / 核酸 / 環境 / ゲノム / 放射線 / 突然変異 / 酸化ストレス / 活性酸素 |
Research Abstract |
酸化的DNA損傷に対する生体防御機構を基盤に、高感度の変異原性評価系を確立することを目的として取組んできた。その結果、酸化的DNA損傷に対する修復・防御系の遺伝子欠損マウスを用いることで、これまで野生型マウス等では検出されていなかった酸化ストレスに起因する変異について、詳細に解析できる系が確立できた。 1.酸化ストレスとしてのX線の間接作用に注目して、6週齢の野生型並びにMth1遺伝子欠損マウスにX線4Gyを全身照射し、2週間後に脾臓からDNAを抽出して突然変異を解析した。その結果、X線照射されたMth1遺伝子欠損マウスでは、A:T→G:C型トランジション変異が有意に上昇していた。この変異の原因の一つとして、X線照射によりヌクレオチドプール中に生じた8-oxo-dATPが候補になると考えられる。 2.DNA中に存在する酸化型グアニンである8-オキソグアン(8-oxoG)とシトシンの対合から、8-oxoGを切り出す活性を有するOgg1(8-oxoG DNAグリコシラーゼ)について、上記と同様な解析を行った。その結果、X線照射されたOgg1遺伝子欠損マウスでは、G:C→T:A型トランスバージョン変異が有意に上昇していた。 3.Mutyh遺伝子欠損マウスでの自然突然変異の解析で、G:C→T:A型トランスバージョン変異が有意に上昇していたことを踏まえ、酸化剤である臭素酸カリウムを飲水投与したマウスの小腸での突然変異解析を行った。その結果、対象群と比較して、酸化ストレスを誘発したMutyh遺伝子欠損マウスでG:C→T:A型変異の有意な増加を認めた。自然及び酸化ストレス誘発突然変異の解析の結果、Mutyhは内因性、外因性の酸化ストレスにより生じた8-oxoG等の酸化的DNA損傷に起因する変異を抑制していると考えられる。 4.これまでの研究で、酸化的RNA損傷の感知とその除去に関与していると思われるヒトPNPT1遺伝子が特定出来たので、標的遺伝子組換え法によりマウスのPnpt1遺伝子欠損細胞株の樹立をする目的で、既に公開されているマウスC57BI/6Jのゲノムデーターベースから遺伝子破壊に適当と思われる領域を選定してプライマーを設計し、ターゲティングベクターの作製を進めている。 5.損傷したRNAが遺伝子発現に影響するか否かを解析するモデルとして、アデニン残基が脱アミノ化して生じるヒポキサンチンをsiRNA配列中に含む形で特定の細胞株に導入したところ、遺伝子の発現異常が観察された。これにより、RNA損傷が遺伝子発現に異常を引き起こすかどうかを直接的に測るアッセイ系の開発に成功した。
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Research Products
(7 results)