Research Abstract |
本研究は,界面活性剤分子が固体粒子に吸着して生成する吸着ミセル(アドミセル)に水中の汚染物質を取り込ませ,これをフローテーションにより迅速かつ高効率に回収する排水浄化システムの構築を目指している.本年度は以下の事項について研究を進めた. アルミナ粉末に陰イオン性界面活性剤を吸着させ,このアドミセルに有機汚染物質(例えばクロロフェノール類)を捕集し,フローテーションによる回収を行なった.その結果,このシステムは酸性領域では有効に機能するが,中性領域ではアドミセルの安定性に問題があり運転には適さないことが分った.一方,シリカゲルに陽イオン性界面活性剤を吸着させて用いたところ,安定なアドミセルが得られ,捕集・回収効率を大幅に改善することができた.更に,このアドミセルに疎水性キレート試薬を含有させたところ,重金属元素(例えばCdやPbなど)も速やかに回収することができた. また,強塩基性イオン交換基を有するセファデックスゲルと陰イオン性界面活性剤の組み合わせにより,広範なpH領域で操作可能な重金属元素の濃縮法を開発した.固相担体にポリスチレン粉末,そして非イオン性のポリオキシエチレン系界面活性剤を用いることにより,鉄マトリックスの吸着除去法や貴金属元素の選択的回収法も開発することができた. 更に,固相担体に替わって液相に界面活性剤を組み合わせるw/oエマルション法についても検討を行なった.金属元素の捕集効率とキレート試薬の化学構造の関係について系統的な調査を行い,水中重金属元素の存在形態別分析を多元素同時に行なうことが可能な分離濃縮法を開発することができた. 以上,本年度は様々な担体と界面活性剤の組み合わせを検討し,有機および無機汚染物質の捕集を行なった.その結果,フローテーション排水浄化システムに適するアドミセルの設計指針および調製方法に関する有用な知見を得ることが出来た.
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