2004 Fiscal Year Annual Research Report
光異性化骨格を持つ分子を利用した単一分子の力学的な化学識別とマニピュレーション
Project/Area Number |
16310071
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
福井 賢一 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教授 (60262143)
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Keywords | 分子探針 / 化学種識別 / 非接触原子間力顕微鏡 / 光異性化 / マニピュレーション / 化学的相互作用 / Noncontact AFM |
Research Abstract |
非接触原子間力顕微鏡(Noncontact AFM ; NC-AFM)は、STMに迫る高い空間分解能を持ちながら試料の導電性を必要としない新しい表面原子・分子観察手法として発展している。NC-AFMは探針-試料間に働く微弱な引力的相互作用をカンチレバーの共振周波数の変化として検知し、画像化する。長距離力の寄与を減らして原子・分子分解能の画像化に寄与する化学的相互作用(短距離力)を顕在化できれば、化学的相互作用を積極的に利用した高分解能化学種識別が可能となる。本研究の目的は、針状分子を‘探針'として用いることで高い空間分解能をもち、且つ化学種識別が可能な探針を開発し、相互作用力顕微鏡を実現することである。 カンチレバー先端に固定した分子を‘探針'として用いて高い空間分解能を達成するため、アダマンタン骨格を中心として自由度の小さい針状分子鎖を足と‘探針'に持つ三脚型で、かつ‘探針'分子鎖の途中に外部からの光照射に応じて構造異性化を起こすアゾベンゼン骨格を導入した分子を設計し、合成、NMR, Mass等でキャラクタリゼーションを行った。また、ジクロロメタン溶液中の合成分子の紫外・可視吸収スペクトルが、UV光(360nm)-可視光(450nm)の照射に応じて可逆的に変化することを確認した。 合成した分子が探針に吸着した状態で光異性化を起こすのか、また高分解能探針と成りうるのかを確認するため、合成分子のTIF溶液中にAu基板を浸漬し、分子を分散した状態でAu-S結合により吸着させ、NC-AFMで評価を行った。その結果、分子が室温においても十分強く基板に吸着していること、期待されるようにUV光(360nm)-可視光(450nm)の照射に応じた光異性化に伴い約1nmの高さ変化が可逆的に起こることが実証できた。また、‘探針'分子により、観察に用いているNC-AFM探針先端の形状を反映した像が観察された。
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