2006 Fiscal Year Annual Research Report
光異性化骨格を持つ分子を利用した単一分子の力学的な化学識別とマニピュレーション
Project/Area Number |
16310071
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
福井 賢一 東京工業大学, 大学院理工学研究科, 助教授 (60262143)
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Keywords | 分子探針 / 化学種識別 / 走査プローブ顕微鏡 / 化学的相互作用 / 光異性化 / 水素結合 |
Research Abstract |
本研究の目的は、針状分子1個を非接触原子間力顕微鏡(NC-AFM)の‘探針'として用いることで高い空間分解能をもち、且つ化学種識別が可能な探針を開発し、相互作用力顕微鏡を実現することである。実効的な探針曲率半径を小さくすることで、長距離力の寄与を減らして化学的相互作用(短距離力)を顕在化し、また‘探針'先端の官能基をデザインすることで相互作用の大きい特定の化学種を画像化できる。本研究では光異性化骨格を持つ分子を用いて、外部からの光照射により'構造観察用探針'と'化学相互作用検知用探針'を可逆的に切り替えて同一箇所を観察可能とすることで、高い確度で化学識別能を実証する。 昨年度までに、合成した三脚型探針分子を金コートしたカンチレバー探針先端に吸着させて、UV光(360nm)-可視光(450nm)の照射に応じた探針先端分子の可逆的形状変化を実証し、本分子が光という外部刺激に対して応答する分子探針としての基本的性質を満たすことが分かった。今年度は、カルボン酸を先端官能基としてもつ三脚型分子を新たに合成し、trans型の時にカルボン酸が表面化学種と水素結合を形成することを利用した高い空間分解能をもつ化学種識別の可能性を検証した。TiO_2(110)表面にまばらに分布する表面水酸基に対して適用した結果、カルボン酸官能基で観察したときに、0.65nm周期の酸素の1次元原子列が観察できるとともに、表面水酸基の位置でより大きな引力が働くことが分かり、これが水素結合形成によると結論した。また、通常のSi探針でこの表面を観察すると、像のコントラストの反転が起こるなど不安定であることが報告されているのに対し、分子探針では結合が飽和しているために長時間安定に観察が可能なことが確認できた。以上の結果により、局所的な水素結合形成により表面化学種の高分解能観察が可能であることを示すことができた。
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Research Products
(3 results)