Research Abstract |
本研究では,針挿入時の痛みや恐怖の軽減,微量血液検査の実現,携帯型血糖値モニタリングの実現等を目的として,蚊を模擬したギザギザ形状のマイクロ注射針の開発を目的とする.材料として,生生分解性の特長を持つポリマー材料「ポリ乳酸」を用いる.本年度は,1)ポリ乳酸のマイクロ射出成形による針外形の製作プロセスの確立,2)針の人工皮膚に対する穿刺抵抗力の評価,3)レーザによる針の穴開け加工プロセスの開発,4)毛管現象による血液の採取,を主に行った.1)については昨年度開発したマイクロ射出成形装置を用いて,穿刺に耐え得る高強度の針を成形するための最適な射出温度,射出圧力のサーチを行った.この結果,射出温度を融点付近,射出圧力を装置の許容最大値に設定した場合,最大の強度が得られることが判明した.2)については,高感度と高剛性を両立させたロードセルを特注により作製し,これと1軸リニアステージを組み合わせて,穿刺抵抗力測定装置を開発した.本装置は,コンピュータにより針の送り量の制御,送り量の検出,ロードセルからの穿刺抵抗力の検出をリアルタイムで行うことができる.この結果,針の先端開き角が鋭いほど,また針の外径が小さいほど穿刺抵抗力が低減することが判明した.ギザギザ形状については穿刺力低減への顕著な効果がみられなかった.蚊の針がギザギザであるのは,何か別の目的があると思われ,現在,蚊の穿刺動作をズームマイクロスコープを用いて詳細に観察して蚊の穿刺メカニズムの解明を行っている段階である。3)については,エキシマレーザ加工装置を用いて,マイクロ針への高アスペクト穴加工(φ20μm,深さ1mm)に成功した.4)については,穴加工を施したマイクロ針を血液に浸して,毛管現象の原理により穴を血液が上昇することが確認できた.これにより,真空吸引やポンプメカニズムを必要とせずに血液が採取できることが示された.
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