2005 Fiscal Year Annual Research Report
βグリコシルアミジン誘導体をツールとする植物グリコシダーゼの生物有機化学的研究
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16310152
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
平竹 潤 京都大学, 化学研究所, 助教授 (80199075)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水谷 正治 京都大学, 化学研究所, 助手 (60303898)
清水 文一 京都大学, 化学研究所, 助手 (50324695)
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Keywords | β-グリコシルアミジン誘導体 / β-グリコシダーゼ阻害剤 / 基質アナログ / グリコン基質特異性 / 静電的相互作用 / アフィニティーリガンド |
Research Abstract |
本年度は、グリコン部にグルコース、ガラクトース、キシロース、N-アセチルグルコサミンの構造をもつそれぞれのβ-グリコシルアミジン誘導体を4種類、対応するβ-グリコシルアミド4種類、さらに、これらの化合物の細胞透過性を高めるために、それぞれの糖の水酸基をアセチル基で保護したβ-グリコシルアミジンアセチル体を4種類、β-グリコシルアミドアセチル体を4種類の、合計16種類の化合物について、ノビエ、ホタルイ、コナギ、アオゲイトウ、エノコログサに対する一連の除草活性試験を行った。また、イネいもち病菌、キュウリ灰色カビ病菌、コムギふ枯病菌、トマト疫病菌、ムギ赤カビ病菌に対する一連の殺菌活性試験を行った。その結果、除草活性では20および200ppmでは、いずれの化合物も、これら雑草に対して除草活性は認められなかった。また、殺菌活性については、液体培地中の10ppm処理では、いずれの化合物もin vitroでの生育阻害活性は認められず、また、植物体に対するin vivo予防活性評価のための散布処理(100ppm処理)、灌注処理(25ppm処理)では、いずれの化合物にも防除効果は認められなかった。以上のように、β-グリコシルアミジン誘導体は、強いβ-グリコシダーゼ阻害活性はあるものの、in vivoでの除草活性や抗菌活性を示さなかった。これは、高度に親水的でイオン性の構造から、薬剤の吸収あるいは細胞への透過性に問題があることが示唆される。 一方、β-グルコシルアミジン誘導体が、酵素の活性中心にある触媒残基のうち、酸-塩基触媒として作用するGluあるいはAsp残基と静電的相互作用により結合、酵素を阻害することが、茶葉由来β-グルコシダーゼを用いた阻害のpH依存性でも確認された。昨年度、β-プリメベロシダーゼおよびβ-ガラクトシダーゼを用いた実験により、同様の触媒残基(酸-塩基触媒)との静電的相互作用が重要であることが判明したが、このことを裏付ける結果が別の酵素でも得られたことから、β-グリコシルアミジン誘導体は、基質アナログとして、酵素の基質特異性に応じた高い選択性で酵素と相互作用し、酵素の酸-塩基触媒残基と静電的相互作用することにより強い阻害作用をあらわす阻害剤であることが確立された。この事実をもとに開発したpH可変アフィニティークロマト法で高純度に精製したβ-プリメベロシダーゼを結晶化し、得られた単結晶に阻害剤β-プリメベロシルアミジンをソーキングし、X線結晶構造解析により酵素の立体構造を解析したところ、2.5Åの分解能で構造が解けた。詳細な立体構造の解明には、まだ、さらなるリファインメントが必要だが、リガンドとなるβ-プリメベロシルアミジンの結合様式が判明し、還元末端のグルコース部分はねじれ舟形のコンフォーメーションを取っており、阻害剤のアミジニウム基は、予想どおり、酵素の酸-塩基触媒残基と静電的相互作用する位置にあることがわかった。これにより、β-グリコシルアミジン誘導体は、酵素の酸-塩基触媒残基と静電的相互作用する基質アナログとして強い阻害活性を示すことが、構造的にも確認された。
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Research Products
(1 results)