2007 Fiscal Year Annual Research Report
カリブ海社会アジア系のエスニシティ再構築:グローバル化とクレオール化
Project/Area Number |
16310162
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
柴田 佳子 Kobe University, 国際文化学研究科, 教授 (30183891)
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Keywords | カリブ海地域 / エスニシティ / グローバル化 / クレオール / 中国系 / インド系 / トランスナショナル / ディアスポラ |
Research Abstract |
現地調査と蓄積してきた資料整理に努めた。 ジャマイカの中国系の祖先儀礼の現代的諸相を詳細に参与観察し、多数にインタビューした。土着化した中国系が多数海外移住してコミュニティが機能せず、治安の悪化で民族墓地内外も荒廃し、儀礼は中断していたが、(1)80年代以降の政治経済状況の改善で移民の帰国や住還も増え、(2)改革開放後の大陸や香港からの新移民との邂逅により民族意識が高揚し、(3)移民到来後150周年を2004年に迎え、出自と経路を確認しつつエスニシティが再考され、(4)歴史認識と民族文化への誇りが高まった。(5)トランスナショナルな移民ネットワークを駆使して人、金、情報、技術、知職を利用し、(6)民族墓地の大破損の修復、(7)GISを用いた墓地全体図のデジタル化、(8)インターネット上で不明墓地の同定、修復依頼も可能とした。結果、移民が里帰りして儀礼ができ、統括的組織(華人協会)主導の儀礼も復活存続している。 北米の中国系ジャマイカ人は他のカリブ社会出身者と連携をとり「カリビアン」、「ウェスト・インディアン」という再ディアスポラ的アイデンティティを醸成しつつもジャマイカ人、ないしジャマイカ経由の中国系という意織も高めている。大陸や香港出身の中国人との相互交渉もあり、グローバルなネットワークとも接合し、クレオール化とグローバル化は密接な相関関係にある。 インド系と中国系の関係は蜜でなく、相互に意識して文化表象における位置の政治力学を展開している。階級・階層意織も強く、中流層以上は教育、職業、婚姻相手の選択に強い民族意織を示し、クレオール化を嫌う傾向が強い。 インド系が国民の過半数を占めるガイアナでは、中国系はほとんどが北米他へ再移住し、コミュニティが機能しなくなって久しい。少数の新移民が積極的にビジネスに進出し、その定着過程で顧客との交渉や子供の学校等によりクレオール化への契機も見られるが、旧移民との接触はあまりない。
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Research Products
(3 results)