2005 Fiscal Year Annual Research Report
選択的近代化とその相互干渉をめぐる思想史と現在の理論
Project/Area Number |
16320014
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Research Institution | Tokyo Keizai University |
Principal Investigator |
三島 憲一 東京経済大学, 経済学部, 教授 (70009554)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木前 利秋 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (40225016)
WOLFGANG Schwentker 大阪大学, 人間科学研究科, 助教授 (30379226)
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Keywords | 近代化 / 文明論 / 比較 / 交錯 |
Research Abstract |
本年度は、1)ヨーロッパ以外の地域における近代化の経験、 2)それを踏まえた多様な近代化論を研究し、その上で、 3)そうしたさまざまな近代化を開発の観点から批判的に考え、および 4)そうしたさまざまな近代化の交錯についての理論的議論を広く収攬した。 以下に項目ごとに手短に説明する。 1)のヨーロッパ以外の地域における近代化の経験については、7月のワークショップで、ブラジルを扱ったオーピッツ、中国を扱ったポンメランツなどの著作を中心に研究会で討論を行った。韓国の全聖佑の論文も含まれる。 2)また、そうした多様な近代化の道を踏まえた近代化理論については、アイゼンシュタット、アーナッソン、ランデリアなどの論客の著作を何回かの研究会で扱った。 3)その上で、さまざまな近代化の実態を「発展」という観点から扱うワークショップを11月に行った。このワークショップは東大、早稲田大、独立行政法人民族学博物館などの他大学、他研究所からもその分野の専門家を招き、開発論を踏まえながら、チベット、アフリカ、韓国の近代化の実態について論じた。 4)こうした経緯を踏まえて、3月にドイツ、スイス、インド、アフリカ、などから「交錯する近代」についての理論と実態の専門家を招き、3日間にわたるワークショップを行った。そこでは、本質主義的文化論からの訣別が確認されたが、同時に文明論のなかに潜む本質主義が吟味せざるを得ない課題として浮かび上がった。また文明同士の交錯についての研究の必要性が強調されることになったが、現在に照準を定めるか、過去に大きくさかのぼるかの方法的相違は今後の課題として残った。またヨーロッパの近代化を、はじめからヨーロッパ以外の地域との関係性、相互依存、相互交渉の枠の中に位置づけ、ヨーロッパの近代化自身を、植民地との関係の所産として見る「関係主義」の重要性について、多くの研究者の合意があった。 本年一年間で研究代表者、研究参加者、研究会に参加する大学院生、そしてワークショップへの他大学、海外からの参加者の報告などをあわせると50近くのペーパーがすでに生まれている。本研究プロジェクト終了時点で、この中から最高水準のものを選び、討論による修正の後に、一巻の著作として出版する予定である。
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Research Products
(14 results)