2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16320036
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
湯浅 博雄 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (30130842)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮下 志朗 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (90138610)
鍛冶 哲郎 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (30135818)
丹治 愛 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (90133686)
西中村 浩 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (80218172)
野崎 歓 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (60218310)
|
Keywords | 翻訳 / 翻訳可能性 / 言語態 / 異文化 |
Research Abstract |
本年度は、文化の翻訳可能性と不可能性を探究した。いろいろ異なる文化(言語、社会)は、歴史的に見れば、きわめて異なる源から生まれ、違った仕方で発展してきたものであり、個々の文化は、他に代えられない独特なものを持っている。たとえば宗教性がそうであるように、きわめて特異な固有性である。他なる文化の核をなす、こうした特異なものは、ある一つの文化に属する私(主体)がそれを受け止め、理解し、受け入れようとするとき、最も強く私に抵抗し、逃げ去り、私(の言語、思考)によって理解されるままにはならない。この独特な特異性は、言語態的な観点から言えば、そのラング(母語)に固有な語法、特有な言い回しや語り口によってしか言い表せないものであり、それゆえ翻訳することが最も困難なものである。異文化の受け入れにおいて肝心なことは、この翻訳しがたいものから眼をそらさず、絶えずそれを気づかうことだろう。伝達=疎通しやすいもの、明確に言い表しうるものにとどまっていては、異文化を受け入れるということを誤認してしまう。翻訳しがたいものは、私(の言語、思考)にとってまったくの他であり、特異なものであるが、しかし特異で固有なものであるからといって、普遍化しえないものであるとは限らない。各々の文化(言語)において、志向する仕方(たとえば宗教性を志向する仕方)はそれぞれに異なっている。だから、等価なものではないし、単純に交換可能でもない。けれども志向されているものは、あるやり方で同じものである(それゆえ共通する)ことがありうる。各々の文化のうちで、なにかしら同じものが志向されているという点で、各々の文化は、源流、発展の経緯、歴史の相違を超えて、ある種の類縁性と親近性を持つであろう。こうした点を含めて、10月22日にはシンポジウム「精神分析的視点の可能性」(東大、駒場)を開催し、湯浅、山田などの提題に基づいて議論を深めた。
|