2007 Fiscal Year Annual Research Report
暴動する反近代としての<過剰な食>-規範の逸脱をめぐる複合文化学研究
Project/Area Number |
16320040
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
福田 育弘 Waseda University, 教育・総合科学学術院, 教授 (70238476)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神尾 達之 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (60152849)
桑野 隆 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (90143677)
後藤 雄介 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 准教授 (60296374)
高橋 順一 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (80206812)
原 克 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (40156477)
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Keywords | 飲食 / 身体 / 表象 / ワイン / 排泄 / 嘔吐 / テクノロジー / 喰人 |
Research Abstract |
それぞれの研究員が各分野において、近現代の飲食行為とその表象について、次のような問題を明らかにした。福田は、ギリシア・ローマの文化とキリスト教に基づいた西洋における共食の思想が、19世紀後半、個食の快楽とでもいうべき心性に内側から脅かされていること、またそれに伴って、に強力な共食思想がない日本においては、飲食行為全般の欧米化のなかで、個食の快楽への表象が共食を下位区分として従属させる傾向が強いことを解明した。神尾は、食物を摂取する器官としての口を含む顔に焦点を合わせ、それが飲食の表象に大きく関連することを明らかにした。後藤は、近代と飲食の関係を、ラテンアメリカをめぐる「喰人」表象に探り、ラテンアメリカが欧米とりわけ米国との関係において、ときに「喰らう者」として、またときには「喰らわれる者」として表象されることを解明した。桑野は、1920年代のロシア・アヴァンギャルド、1930・40年代の社会主義リアリズム絵画における食の表象を比較対照し、前者の試みにおける実用面での限界、後者の作品における実態の粉飾を、改めて確認した。高橋は、異人歓待の規則ともいうべきホスピタリティの概念こそが近代においては重要であり、それがベンヤミンと開高健のテクストにおいて食のユートピアとして表れていることを検討した。原は、20世紀の食は、近代的テクノロジーの生産物としての日用品がユーザーに要請する、双方向的な身体論的・心理的・美学的記号性を前言説的諸関連とすることによってしか成立しえないという観点から、こうした状況を表象分析することにより、20世紀の食の特異性を明らかにした。これらの各人の研究成果は、全体として、近代における飲食行為とその表象が、文化人類学や社会学が提示する従来の共食モデルから逸脱していることを示している。
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Research Products
(11 results)