2006 Fiscal Year Annual Research Report
香港におけるリテラシーの変遷と変異に関する社会言語学的研究
Project/Area Number |
16320048
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Research Institution | University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉川 雅之 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教授 (30313159)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西野 由希子 茨城大学, 人文学部, 助教授 (40262357)
志賀 市子 茨城キリスト教大学, 文学部, 助教授 (20295629)
日野 みどり 金城学院大学, 現代文化学部, 助教授 (00367632)
芹澤 知広 奈良大学, 社会学部, 助教授 (60299162)
帆刈 浩之 川村学園女子大学, 文学部, 助教授 (40284278)
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Keywords | 香港:マカオ / 読み書き・文字 / 多民族・多言語 / 共同体とアイデンティティ |
Research Abstract |
本研究は第二次世界大戦後の香港を対象として、読む・書くという行為およびそれに伴う社会活動・社会現象の諸相を考察するものである。 最終年度に当たる本年度、研究代表者の吉川は2006年5月に香港歴史档案館にて「香港政庁が1948年に予定していたが取り止めとなった人口統計の記録済み回答票506件」に関する追跡調査を行った。分担者の芹澤は2005年8月に香港で広告の史的変遷に関する調査を行った。2006年11月12日と26日には東京大学駒場キャンパスにて研究成果報告会を催し、集中的に討論を行った。そして、そこで発表された研究内容に基づき、研究成果報告書を2007年3月に作成、内200部を国内外の研究者や機関に謹呈し、同月末日を以て研究期間を終了した。各論文の題名と執筆者は下記のとおりである(道上知弘と横田文彦の2名は協力者である)。 戦後早期の識字層と非識字層(吉川雅之)、戦後初期の「広東語文藝映画」(道上知弘)、文学史上の転形期-劉以鬯と1970年代文学(西野由希子)、「新青学社」に関する史料(日野みどり)、アルコール飲料の新聞広告-社会の変化(芹澤知広)、新聞広告言語分析-1950-80年代(横田文彦)、新聞広告に関する産業と技術の概略-1950-80年代(芹澤知広)、新聞広告データの基礎的記述(横田文彦)、広東語点字の表記法(吉川雅之)、ネパール人コミュニティの言語選択-言語とアイデンティティ(西田文信)、尊孔運動の興隆と衰退-1950-60年代香港中国人のナショナリズムとアイデンティティ(志賀市子)、医療・衛生の現地化とリテラシー-1960-70年代(帆刈浩之)、「新青学社」の9年-1970-80年代の青年運動と社会変動(日野みどり)、香港における法と中国語一第一次中文公用語化運動を中心に(廣江倫子・吉川雅之) リテラシーという特定の事象を共有することで、当初の目的であった1.社会構造の変化と「読み・書き」、2.「読み・書き」能力と文字使用、3.音声言語の書記言語化、といった諸問題に有益な見解を提示することができただけでなく、香港における社会言語学研究の盲点であり続けてきた「書記言語」「適時的視点」「社会の周辺的構成員の言語使用」を主要考察対象としたことから、香港の社会言語学に新たな展開を提供する効果が期待できると考えている。さらに、本研究のコンセプト「リテラシー」は、台湾やシンガポール、そして戦前の上海を対象とした学際的研究においても適用可能であるという認識に到った。
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Research Products
(9 results)