2005 Fiscal Year Annual Research Report
中国語の構文及び文法範疇形成の歴史的変容と汎時的普遍性-中国語歴史文法の再構築-
Project/Area Number |
16320049
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木村 英樹 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (20153207)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大西 克也 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教授 (10272452)
玄 幸子 関西大学, 外国語教育研究機構, 教授 (00282963)
松江 崇 北海道大学, 大学院・文学研究科, 助教授 (90344530)
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Keywords | 古代中国語 / 漢訳仏典 / 近代中国語 / ヴォイス / 使役 / 老乞大 / 格変化 / 語順変化 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、それぞれが分担する時代分野を対象に、資料の収集と分析を通して基礎的研究の充実を図ると同時に、漢語の汎時的普遍性を視野に収めつつ、以下の研究を行った。 木村は、昨年成果を上げた現代北京方言の授与動詞の文法化に関する研究をさらに発展させ、北京方言と上海方言との対照研究を試み、<授与>と<受動>の間に成立する意味的および構文的ネットワークのメカニズムの方言類型論的な差異を明らかにした。また、新たに現代中国語の「主語」カテゴリの構文論的分析にも取り組んだ。 大西は、昨年に続き、古代中国語を対象に、主としてヴォイスの研究に取り組み、助動詞「可」と「可以」の主語の意味役割の違いが、助動詞の付かない他動詞構文における目的語の意味役割(可)と主語の意味役割(可以)とに規則的に対応していることを明らかにし、古代中国語にヴォイス範疇が成り立ちうる検証を進めた。また秦漢時代における語彙的使役と文法的使役の相違に関しても初歩的分析を行った。 玄は、近代中国語コーパス(Corpora)構築に継続して取り組み、『華音啓蒙』など朝鮮資料の電子コーパスを完成した。また近代口語研究の一環として、『老乞大』諸資料に現れる言語分析を継続的に行い、現代中国語文法化理論を応用した近世語の分析に関する論考を発表した。更に、基づく史料の真偽問題を考察する視点から昨年11月に唐代文化学術研討会(於台北大学、台湾)において《佛説天地八陽神咒經》に関する研究発表を行い、資料の言語特徴についての論考を公にした。 松江は、早期漢訳仏典を主資料として、疑問代詞目的語の語順変化の問題についての研究をすすめ、禅母系・匣母系・影母系の三系列の疑問代詞の語順変化のメカニズムを包括的に論じた。そして、それぞれの系列の語順変化が、"統語的曖昧性を解消しようとする欲求"と"名詞目的語への類推"という語順変化を引き起こした二要因と関わる程度の違いにより、疑問代詞目的語の語順変化の先後に差異が生じた諸相を明らかにした。さらに、上古漢語の形態論という難問と直接的に関わる上古人称代詞の格屈折の問題を取り上げ、重要な先行研究の内容を整理し、解決のために今後とるべき研究の方向性を提案した。 なお、3月には中国と台湾から歴史文法の専門家3名を招聘し、国際シンポジウム『中国語における文法構造と文法範疇の歴史的変容と普遍性』を開き、今年度の研究成果についての討論と意見交換を行った。
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Research Products
(6 results)