2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16320056
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
大城 光正 京都産業大学, 外国語学部, 教授 (40122379)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 和彦 京都大学, 大学院・文学研究科, 教授 (90183699)
池田 潤 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 助教授 (60288850)
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Keywords | 言語接触 / 能格 / アッカド / フルリ語 / 聖書ヘブライ語 / 接尾活用形 / ヒッタイト語 / アマルナ語 |
Research Abstract |
アッカド語とフルリ語の言語接触をカトゥナ・コーパスをもとに考察した結果、同コーパスにおける両言語の能格と絶対格の一致標識に関しては、能格型構造の出現条件として、一文中に能格(ergative)を提示する名詞句が表出されない場合にのみ対格型構造から能格型構造へのコードスイッチングが生起するという結論を得た。フルリ語が顕著な能格型構造を有する言語であることから、言語接触によるアッカド語への影響の蓋然性が高い。また、シュメール語の能格的特徴の保持を勘案すれば、同地域における基層的な能格現象の可能性も否定できない。さらに、セム系楔形文字言語のアマルナ語からの着想を得て、聖書ヘブライ語の接尾活用形の従来の説とは相違して、同活用形はテンス・ムード・アスペクトには無標で、これらの意味表出は文脈依存(前文と照応または同一文中の副詞)によるもので、特に文脈指定がない場合、同活用形は動詞の意味表出にはデフォルト値を取ることが確証された。 さらに、各楔形文字の接触とその背後にある言語組織については楔形文字言語以外の諸言語との比較も重要であり、たとえば、従来楔形文字表記の-z-と-zz-の相違は言語学的対立が存在しないと考えられていたが、少なくとも古期ヒッタイト語では両表記に弁別的特徴が首肯される。また、ルウィ系諸言語の動詞語尾の過去形にはヒッタイト語(-hat,-tat,-at,-wastat,-dumat,-antat)と相違して中・受動態語尾が欠落している。これは語末の歯茎閉鎖音(*〜t)の脱落がルウィ祖語に生じた結果、能動態と中・受動態が融合したものと考えられる。 以上の考察については、大城が主宰する西アジア言語研究会(第11回:平成16年12月18日:京産大)で研究成果の一部を発表している。
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Research Products
(3 results)