2005 Fiscal Year Annual Research Report
助動詞の体系が言語に及ぼす影響に関する理論的・実証的総合研究
Project/Area Number |
16320061
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鷲尾 龍一 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 教授 (90167099)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大矢 俊明 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 助教授 (60213881)
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Keywords | 受動構文 / 助動詞選択 / 助動詞構文の類型 / 助動詞構文の起源 / ゲルマン諸語 / アジア言語 / 英語 / パラメータ |
Research Abstract |
本研究課題では,現代英語の特徴として(1)非人称受動を欠く〔独語・蘭語と異なる〕,(2)複合時制における助動詞選択(HAVE/BE選択)の現象を欠く〔独・蘭と異なる〕,(3)動詞の単純現在時制が未完了の解釈を許さない〔独・蘭と異なる〕,(4)迂言的進行形《BE+現在分詞》を有する〔独・蘭と異なる〕,(5)動作受動を《BE+過去分詞》の形式で表わす〔独・蘭と異なる〕,(6)格の区別を欠く〔独と異なり蘭と共通〕,(7)与格受動を許す〔独・蘭と異なる〕,(8)自由与格の生起が極端に制限されている〔独と異なり蘭と共通〕,(9)現在完了構文に特定の副詞類(yesterday等)が生起しにくい〔独・蘭と異なる〕,(10)動詞HAVEに基づく使役構文を有する〔独・蘭と異なる〕,などの点に注目し,これらの性質の間にどのような有機的関連があるのか(あるいはないのか)を検討している.今年度は,(3)の性質があるために(4)の迂言形式が必要になるとの見通しから出発し,考察範囲をアジア系の言語にも広げた.その結果,日本語や韓国語などの言語が迂言的進行形を有するのも同じ理由からであるとの仮説に到達したが,これは日本語における動詞終止形の起源についても一定の示唆を与えるものである.また,初年度から継続している(2)や(5)についても,構文の起源に関する考察を進める過程で,日本語における類似の構文との間に強力な通時的平行性を認め得るとの結論に至った.ゲルマン系諸言語の考察から,言語全般に関わるいくつかの一般化が得られつつある.研究成果は論文にまとめると共に,『日本中国語学会』第55回全国大会(平成17年10月29日,筑波大学)における特別講演("Some Issues in Unaccusativity")などを通じて公にした.
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Research Products
(2 results)