2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16320062
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
松岡 和美 Keio University, 経済学部, 教授 (30327671)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
星 浩司 慶應義塾大学, 経済学部, 准教授 (50286605)
三好 暢博 旭川医科大学, 医学部, 講師 (30344633)
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Keywords | 言語獲得 / CHILDES / 主語志向パターン / だけ / とりたて詞 / association with focus / 厳密派生計算モデル / choice function |
Research Abstract |
言語獲得班は、引き続き日本語を母語とする幼児の焦点表現「だけ」の解釈パターンの考察を進めた。これまでの実験研究で観察された3つのパターンのうち、特に格助詞が直後に含まれない場合に顕著に現れる「主語指向パターン」に注目し、この現象が日本語を母語とする幼児5名の自然発話コーパス(CHILDESコーパスを利用)でも観察可能かどうかを調査した。主語と目的語の両方を含む文は数が限られていたが、その中で「だけ」が現れるのは主語の直後が大多数であった。目的語に「だけ」がつく際には、全体の語順が基本語順とは異なることも観察された。発達初期の日本語の発話においては、「だけ」が主語と結びつきやすいことがうかがわれる。これは実験研究で見られた「主語志向パターン」の存在に経験的サポートと解釈できる。統語班は、単一サイクルを仮定した厳密派生計算モデルにおける焦点化の副詞、特に「とりたて詞」の分析を精緻化させることで、狭義の統語以外のモジュールとの関係を考察した。具体的には、顕在的統語部門において、とりたて詞の統語的認可が行われ、意味解釈に必要な構造関係が決定されるという主張を展開した。この主張は最近のミニマリスト・プログラムで追及されている研究方針に支持を与えるものである。一見すると非顕在的統語部門における計算が必要な現象が、実際には、非顕在的統語部門における計算では扱えないことも明らかにした。比較統語論的観点からは、獲得理論上、とりたて詞の語彙的意味の獲得が最も重要な問題となる可能性を指摘した。すなわち、association with focusの局所性の有無は、Choice Functionが利用可能であるか否かと密接な関係があり、焦点化の副詞の獲得は広義の語彙パラミター仮説(Lexical ParameterizationHypothesis)として扱う新しい方向性を示唆した。
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Research Products
(6 results)