2006 Fiscal Year Annual Research Report
永青文庫細川家文書の史料学的解折による近世民衆生活・行政実態の比較史的研究
Project/Area Number |
16320090
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
吉村 豊雄 熊本大学, 文学部, 教授 (90182823)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三澤 純 熊本大学, 文学部, 助教授 (80304385)
稲葉 継陽 熊本大学, 社会文化科学研究科, 助教授 (30332860)
足立 啓二 熊本大学, 文学部, 教授 (70128247)
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Keywords | 伝統日本社会 / 稟議制 / 合議 / 政策形成 / 部局制 / 地域社会 / 村社会 / 社会集団 |
Research Abstract |
本研究の中軸をなす日本史分野では、熊本大学附属図書館に寄託されている財団法人永青文庫「細川家文書」の系統的解析を行い、中世未一近世期の過程で成立・確立し、近代社会に内実化する日本型社会=伝統日本社会の社会形態、社会統合形態について解明することを基本目的としている。史料解析の主対象としたのは、藩政の基幹帳簿で、民政・地方行政の担当部局=郡方の帳簿たる「見帳」である。「見張」は、関連部局・他部局分を含めて、藩制初期の元和9年(1623)から明治4年(1871)に至る総数400冊に及ぶ長期系統的な帳修辞であるが、これまでの解析作業で解明できたのは、次の諸点である。 (1)熊本藩では、宝暦(1751-1764)の藩政改革を通して藩庁=藩中央機構(奉行所)の部局化が進み、「見帳」においても宝暦・明和(1764-1772)をさかいに郡方部局における稟議制的な行政処理・文書処理が進む。(2)さらに寛政期(1789-1801)以降の「見帳」では、地域社会・村社会から提出される申請書・土中書が郡方の部局審議の起案書として機能し、回議・決議という部局の審議が地域社会・村社会からの申請書・上申書に書き継がれる方式をとっている。(3)しかも「見帳」では、地域社会・村社会からの申請書・上申書を含めて同一的・規格的な料紙(用紙)が使用され、多様な事案が申請・上申=起案から決議に至るまで、あたかも白紙の冊子体に記録されたような形態をとっている。 近世後期藩庁の民政・地方行政は、地域社会・村社会からの申請・上申=起案を稟議処理することで、その過半が達成される段階にある。本研究は、幸いにも「藩政文書・地域文書の体系的分析による前近代日本社会到達形態の解明」という課題で、引き続き平成19年度から科学研究費補助金の交付を受ける予定であり、今後一層、実態研究の深化と理論化を進める所存である。
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Research Products
(4 results)