2006 Fiscal Year Annual Research Report
「植民地責任」論からみる脱植民地化の比較歴史学的研究
Project/Area Number |
16320101
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
永原 陽子 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 助教授 (90172551)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 茂 東京外国語大学, 外国語学部, 教授 (10162950)
舩田クラーセン さやか 東京外国語大学, 外国語学部, 講師 (70376812)
清水 正義 白鴎大学, 法学部, 教授 (20216104)
平野 千果子 武蔵大学, 人文学部, 教授 (00319419)
中野 聡 一橋大学, 社会学研究科, 教授 (00227852)
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Keywords | 植民地責任 / 脱植民地化 / 植民地支配 / 奴隷制 / 奴隷貿易 |
Research Abstract |
3年間の研究の最終年度にあたる本年度は、4回にわたる研究会を実施し、これまでの研究の成果を報告し合い、全体のまとめの議論を行うとともに、海外調査によって、資料の補充に務めた。 研究会については、下記のとおりである。 4月15日 舩田クラーセンさやか「ポルトガルにおける植民地認識-Guerra Colonia1を中心に」 永原陽子「2年間の共同研究の到達点と今後の研究会の方向について」 7月15日 津田みわ「ケニア植民地解放闘争と補償問題-元『マウマウ』闘士によるイギリス提訴」 渡辺司「アルジェリア戦争と脱植民地化-『エヴィアン交渉』を中心にして」 10月14日 小山田紀子「アルジェリアの独立と引揚げ者の歴史-脱植民地化とフランス・アルジェリア関係」 前川一郎「イギリス植民地問題終焉論と脱植民地化」 12月9日 中野聡「ふたつの植民地戦争の戦後60年-米比戦争(1967年)と日本占領(2005年)」 全員 まとめの議論 また、海外調査については、ドイツ(永原)、イギリス(前川、溝辺)で、植民地責任論の最新動向を調査するとともに、各文書館での未公開史料の収集を行った。 9月には、本研究の中間報告として、雑誌『歴史学評論』9月号の特集「植民地主義再考」において、研究分担者4名(永原、平野、吉澤、飯島)が研究成果を公表した。 本研究は、「植民地責任」という、従来なかった新しい概念を試論的に提示し、その可能性を、旧宗主国地域および旧植民地地域双方の動向に即して実証的に検証することを通して、脱植民地化研究の新しい境地を切り拓くことを目指したが、共同研究をつうじて集められた事例は、この概念の提起がきわめて当を得たものであり、今日、植民地主義の「記憶」をめぐって各地で展開する論争や、補償や謝罪を求めて行われている訴訟を歴史学の問題としてとらえる上で大きな可能性を持つものであることを示した。さらにそれにとどまらず、この概念が含む、法的側面(「罪」の側面)から、政治的・倫理的側面(「責任」の側面)までの幅広い射程の中にあるそれぞれの領域を明確にした上で、狭義の「植民地支配」体制に限定されない植民地主義の過去を、それぞれの主体がいかにとらえているかに即して緻密に検証することを通じ、脱植民地化研究を大規模暴力研究へと発展させるという今後の課題も明らかになった。
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Research Products
(15 results)