2006 Fiscal Year Annual Research Report
琉球・沖縄文化とアイヌ文化の比較研究-ヤマト文化を媒介として
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16320119
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
吉成 直樹 法政大学, 沖縄文化研究所, 教授 (80158485)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永瀬 克己 法政大学, 工学部, 教授 (30061237)
藤井 貞和 立正大学, 文学部, 教授 (40134754)
橋尾 直和 高知女子大学, 文化学部, 助教授 (00244400)
谷本 晃久 北海道教育大学, 教育学部, 助教授 (20306525)
安江 孝司 法政大学, 法学部, 教授 (40061197)
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Keywords | 琉球・沖縄 / アイヌ / 口頭伝承 / 主体的歴史認識 / 実証主義的歴史 / 日琉同祖論 / 琉球語の形成 / グスク時代 |
Research Abstract |
1 口頭伝承のなかの「歴史」 本年度の研究活動の柱のひとつとした課題は「口承文学」を含む「口頭伝承」から復元される琉球、アイヌの「主体的歴史認識」とは何を語っているか、ということである。双方の社会における口頭伝承を比較検討することによって導き出された暫定的な結論は、(1)民族の記憶を含む、(2)行動の規範を提供する、という2点に要約することができる。このふたつについて説明をすれば、「主体的歴史認識」とは、たとえ多くの誤謬、錯覚、無意識的歪曲や変容があったとしても、それが「民族の記憶」である限り「歴史」であり、またそれが歴史を創造していく規範を提供するものであれば、やはり「歴史」であるということである。また、こうして抽出された「主体的歴史認識」と「科学的(実証主義的)歴史」には食い違いが生じるのは当然であり、その両者に間をいかに架橋することができるのかということが次なる課題である。こうした作業の過程で、かつてのアイヌの居住地域に広く分布するコロポックル伝説(およびその系統の伝説)の主人公であるコロポックルが、アイヌの口承文学(英雄叙事詩など)に決して登場しないのはなぜか、という点が問題になった。そこには伝説/口承文学という違いはあるが、もし口承文学の中にコロポックルを登場させない意図が働いているのであれば、アイヌの口承文学とはアイヌ社会に根生いのものではない可能性があり、そこから抽出されたアイヌの「主体的歴史認識」とは一体誰のものかという問題が生じることになる可能性も指摘された。 2「日琉同祖論」の再検討 近年の奄美考古学の「台頭」によって、グスク時代の始まる11〜12世紀頃に沖縄諸島には、北からの大きな衝撃があり、それによって沖縄諸島以南の文化は大きく変容すると考えられるようになった。それは文化の問題にとどまらず、人骨の変化という形質人類学的所見からも窺うことができる。この問題に関して、琉球語の形成、現代にいたるまでの文化の基本的な枠組みの形成は11〜12世紀頃に起こったのではないかという点について検討を行った。その結果、その蓋然性は高いという認識をえた。琉球語の形成について、宮古、八重山の文化は11世紀頃までは南方島嶼の結びつきが強く、日本語が用いられていた可能性はなく、それが現在、「琉球語」としての位置が与えられていることの意味、宮古・八重山における言語形成の過程を明らかにする必要があるとの見通しをえた。
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Research Products
(2 results)