Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永瀬 克己 法政大学, デザイン工学部, 教授 (30061237)
藤井 貞和 立正大学, 文学部, 教授 (40134754)
橋尾 直和 高知女子大学, 文化学部, 准教授 (00244400)
谷本 晃久 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (20306525)
島村 幸一 立正大学, 文学部, 准教授 (70449312)
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Research Abstract |
2007年度は最終年度にあたるため,研究成果報告書(冊子体)の作成のための史資料の整理とその分析を行い,各分担研究者,協力者は最終報告とするための論考を執筆した。その成果は,研究成果報告書としてまとめられた。 また,近年の奄美考古学の劇的な成果を踏まえて,古代〜中世並行期の沖縄諸島と奄美諸島の関係について検討した。この問題は,本研究が目的としてきたアイヌと琉球・沖縄のアイデンティティの形成,さらには口頭伝承(口承文芸など)の検討をする際の前提に深くかかわるからである。 つまり,沖縄諸島以南で11〜12世紀に始まるグスク時代とは,奄美社会を経由した人々が南下することによって形成されたものと考えられ,もしそうであるとすれば,琉球国が成立する15世紀までの社会と文化の形成過程とは沖縄の内的発展によって成熟していったものではなく,北からの外的衡撃によるところが大きいと考えられるのである。こうした問題は,琉球・沖縄のアイデンティティの形成の問題,口頭伝承(口承文学あるいは首里王府が16〜17世紀に編纂した祭式歌謡集『おもろさうし』に収められている歌謡など)が,一体,いつ頃に,,誰によって伝えられてきたのかという問題を提起することになる。 この課題については耕究看間の一致をみるにいたらなかったものの,少なくとも,沖縄諸島において,「日本祖語」に存在していたと考えられる「P音」が新しく形成された場合があること,宮古・八重山諸島ではグスク時代にいたるまで,考古資料の点では,一貫してフィリピン,インドネシアなど南方島唄にかかわりがあり,グスク時代以降は奄美諸島の喜界島の土器文化の模倣とみなされることなどから,従来の定説を鵜呑みにすることは到底できないと考えられる。 こうした問題をさらに検討していくことによって,琉球・沖縄研究において,従来の考え方が通用しない,パラダイムの大きな転換が起こるであろうとの予測を得た。
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