2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16330007
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
森 英樹 名古屋大学, 大学院・法学研究科, 教授(理事) (60022422)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浦部 法穂 名古屋大学, 大学院・法学研究科, 教授 (90009811)
本 秀紀 名古屋大学, 大学院・法学研究科, 教授 (00252213)
愛敬 浩二 名古屋大学, 大学院・法学研究科, 助教授 (10293490)
小沢 隆一 静岡大学, 人文学部, 教授 (60224226)
塚田 哲之 福井大学, 教育地域科学部, 助教授 (00283383)
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Keywords | 安全 / 安心 / 平和主義 / 社会保障 / 人間の安全保障 / 危機管理 / 警察国家 / 治安立法 |
Research Abstract |
今年度は、2回の研究会合宿を開催し、総論的検討と各論的分析を行った。3年計画の初年度であったので、まず各国研究に先だって、従来の日本憲法学における「安全と安心」に関する理論史的な枠組みの批判的検討を通じて、本研究の基本的視座を確定・共有した(その成果を公表したものとして、森英樹「憲法学における『安全』と『安心』」藤田宙靖・高橋和之編『憲法論集』(創文社、2004年)503〜525頁)。 その次に、各国・各領域ごとの役割分担を確定し、個別的研究を行った。具体的には、「対テロ戦争」という状況下での「安全」コンセプトの変容について(その成果として、「研究発表」欄記載の岡本論文、参照)、ドイツにおける「不安とリスク」に対応するエコロジー憲法学について、ドイツにおける「自由と安全」をめぐる憲法学の最新動向について、フランスにおける「社会的安全=社会保障」をめぐる議論状況について、アメリカにおける子どもと社会の「安全」について、アメリカにおける「対テロ戦争」に関わる連邦最高裁判決の分析、イギリスにおける都市再生政策と「安全」構築について、「市民の安全」に関するジェンダー分析、等である(以上は順次、法律時報誌に連載・公表の予定)。 これらの検討を通じて明らかになったことは、「リスク社会」以後、とりわけ「対テロ戦争」以降、「安全」という概念の持つ意味が変容してきていること、とくに市民の「安全感情=安心感覚」が重視され、それを国家が「保護」する過程で逆に市民の「自由」が奪われるというパラドキシカルな状況が生まれていること、そうした「自由と安全のパラドクス」を各国・各領域の研究動向分析を通じて明らかにしていく必要があること、であった。 なお、今後の研究の発展を目して、コンピュータ・ネットワークを立ち上げるとともに、必要な文献・資料を多数購入した。来年度以降の研究成果に生かしたい。
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