2005 Fiscal Year Annual Research Report
現代米国における政党変容メカニズムの分析:「決定的選挙」なき政党再編
Project/Area Number |
16330022
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久保 文明 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 教授 (00126046)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
砂田 一郎 学習院大学, 法学部, 教授 (40102818)
松岡 泰 熊本県立大学, 総合管理学部, 教授 (40190425)
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Keywords | 共和党 / 保守派 / 減税 / アメリカ / 政党 / 政党変容 / 民主党 / 保守化 |
Research Abstract |
1.本年度は、まず第一に、共和党が中道穏健派主導から保守派主導へ変容する重要な契機となった1990年予算交渉をとりあげた論文を発表した。G.H.W.ブッシュ政権時代の1990年、民主党多数議会との交渉によって、ブッシュ大統領は公約を破って増税に踏み切った。しかし、ギングリッチら下院の保守派共和党議員を中心に増税に対して強い反対が表明され、結局自党の大統領が政治生命をかけた予算合意に対して、共和党保守系議員は反対を貫いた。その理由の一部には、彼らの多くがすでに、増税反対運動に対して、増税に賛成しない旨誓約して当選していたからに他ならない。保守派の政治運動はこの時期にここまで党内で影響力を確立していたことを本論文は明らかにした。90年は連邦議会に籍をおく共和党議員が増税に賛成した最後の年であり、それ以来今日にいたるまで、一人の共和党議員も増税法案に賛成したことはない。その意味で90年は共和党の保守化を語る上で実に重要な転換点であった。しかも、92年にブッシュ大統領は落選し、95年にギングリッチは下院議長に就任した。共和党内での中道派の衰退、保守派の隆盛をこれ以上に象徴するものはない。 2.第二に、2001年9月11日のテロ事件以降の民主党の内部対立に関する編著と論文を刊行した。1980年代より順調に影響力を拡大し、8年間のクリントン政権を支えた民主党穏健派であるが、イラク戦争以降、戦争支持・不支持をめぐって困難な選択を強いられている。彼らの多くはイラク戦争を支持したため、今日党内では発言力を弱めつつある。左派は反戦撤退論を支持して勢いがあるが、有権者は依然として強力なテロ対策を支持しており、この問題では民主党に対する信頼度は低い。民主党が06年中間選挙、さらに08年大統領選挙で勝利するために、ここでのギャップを埋めることが不可避となっている。
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