2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16330064
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
松井 道昭 横浜市立大学, 国際総合科学研究科, 教授 (10046112)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永岑 三千輝 横浜市立大学, 国際総合科学研究科, 教授 (70062867)
廣田 功 新潟大学, 人文社会・教育系, 教授 (90055236)
上杉 忍 横浜市立大学, 国際総合科学研究科, 教授 (90111799)
浅井 良夫 成城大学, 経済学部, 教授 (40101620)
小野塚 知二 東京大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (40194609)
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Keywords | 福祉国家 / 社会主義労働運動 / 横浜 / ヨーロッパ統合 / ヒトラー / ヴァンゼーラント / 対日援助 / 公民権運動 |
Research Abstract |
松井は、普仏戦争において、最初の国民戦争=総力戦の要素を抉り出し、プロイセン=ドイツの圧勝のうちに幕を閉じたが、軍事力重視、軍組織刷新、作戦研究・用兵術の妙など、表面的、技術的な側面のみが各国の軍事筋に教訓として残され、交戦国双方において兵站力が増せば、自ずと戦争は長期化し、持久消耗戦に転化していく可能性が見落とされることになったことを解明。 永岑は、ヒトラーの戦略と領土膨張構想をボスバッハ覚書と1939年月30日の国会演説の二つから、すなわち秘密の形態と公然たる形態の二つのドキュメントから再構成し、相互連関を明らかにすると同時に、戦争と復興が内面的に関連することを摘出した。廣田は、「連続性」を指摘されるフランスの福祉国家成立史において、社会保険と家族手当という2つの重要な制度の確立を見た戦間期の重要性に着目し、1920年代末〜1930年代初頭にこれらの改革が行われた歴史的背景として、第1次大戦がフランスの経済社会に与えた影響の重要性を明らかにした。 小野塚は、1930年代中葉から戦時にかけて、社会主義・労働運動系の音楽運動が活力を回復した要因と、その過程に表れた新たな特質を明らかにして、戦後復興のもう一つの国際連帯の側面を明らかにした。本宮は、横浜における戦後復興の過程に関して、市内神奈川区大口地区を事例に採り上げ、それをとりまく地域社会との関係性も意識しながら、戦後復興過程の具体的様相を考察し、都市横浜における戦後復興過程の研究に奥行きを持たせる上での詩的素材を豊かにした。浅井は、ワシントンの国立文書館で占領後の対日援助政策とその実態に重点を置いて検討を行ない、占領後においても、対日援助が重要な役割を果たしたことを明らかにした。 上杉は、冷戦期の黒人公民権運動とその圧力を受けて進められたとされてきた連邦政府の公民権政策の転換に関する近年の研究動向を概観し、(1)この公民権政策の外交戦略的側面への注目が重要であること、(2)冷戦下の「赤狩り」によって公民権運動の軌道が規定されたこと、(3)さらに直接的大衆行動に立ち上がった南部の頑迷な白人人種差別主義者をアメリカ史の逸脱としてとらえるのではなく、アメリカ社会の基本的構成要素としてこれを社会史的に分析することが求められていること、を指摘した。 上原は、第二次世界大戦後のフランスが、国力の疲弊という構造的制約のもとで、いかにしてpuissanceパワーを獲得するために、近代化優先政策を展開したプロセスを分析した。小島は、第二次世界大戦中にナチス・ドイツによって占領され,戦後に経済復興を遂げたベルギーについて,欧州統合との関係を視点として検討し、ヴァンゼーラントを発掘して、ベルギーの戦後復興にけるイニシアティヴを解明した。
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