2004 Fiscal Year Annual Research Report
組織における「分配の公正」と「自己実現」-仕事意識の日英比較研究
Project/Area Number |
16330103
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
渡辺 聰子 上智大学, 文学部, 教授 (30220883)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今田 高俊 東京工業大学, 大学院・社会理工学研究科, 教授 (00107517)
綿貫 譲治 創価大学, 文学部, 教授 (80053560)
|
Keywords | 仕事意識 / 自己実現 / 分配の公正 / モティベーション / 雇用関係 / グローバル化 / 人的資源管理 / イギリス |
Research Abstract |
平成16年4月に研究会を開催、メンバー全員で本年度の全体計画を策定した。6月に研究代表者・渡辺がロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)に客員教授として招聘され、5ヶ月間英国に滞在し、英国に所在する企業5杜において管理職、人事担当者、及び従業員を対象にヒアリング及び深層面接調査を実施した。この間、渡辺はLSEのアンソニー・ギデンズ教授と4回の研究会を持ち、研究課題について討論した。また10月にLSEにおいて"The Meaning of Work in Comparative Perspective : The UK and Japan"と題する講演を行い、研究成果を発表した。渡辺の帰国後、12月に研究会を開催した。 調査により得られたデータを分析した結果、以下のような知見が得られた。 仕事意識は組織内の階層によって大きく異なる。たとえば調査対象企業である自動車製造会社での調査では、ブルーカラーの約60%が班長・組長への昇進を求めて働いており、30%が現状に満足、5〜10%が他の職に移りたいと考えているという結果が出ている。しかし働く目的は何かと聞かれると、彼らの大半は金のためであると答え、彼らの中心的な生活関心は家族との余暇など職場外での生活領域にあることを窺がわせる。一方管理職の多くは、働く主要な目的は仕事そのものに関わる達成感、チャレンジ、自己実現であると考えている。彼らを動機付けているのは昇進を伴うグローバルなレベルでの移動である。労働市場の流動性は高く、処遇に不満な人は比較的容易に職を移る。現社員の大半(70〜90%)は概ね現状に満足していると言える。ここ数年来EU全体で進められている「家族に優しい労働立法」に呼応して休暇などのフリンジ給付はこれまで以上に充実する方向にある。英国では受ける資格のある権利は積極的に享受するという「権利主張主義」が社員の間でかなり浸透しており、恩典は積極的に活用される傾向にある。しかし問題は、激化する国際競争に直面する企業は、こうしたフリンジ給付の充実によるコスト増をどこかで埋め合わせなければならず、拠点の整理統合、レイオフによる人員削減などで対応するため、労働市場全般において比較的安定した条件の良い職の数が減少し、失業の増加に繋がるという点である。
|
Research Products
(9 results)