2006 Fiscal Year Annual Research Report
組織における「分配の公正」と「自己実現」-仕事意識の日英比較研究
Project/Area Number |
16330103
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
渡辺 聰子 上智大学, 綜合人間科学部, 教授 (30220883)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今田 高俊 東京工業大学, 大学院社会理工学研究科, 教授 (00107517)
綿貫 譲治 上智大学, 名誉教授 (80053560)
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Keywords | 仕事意識 / 自己実現 / モティベーション / 自己組織性 / 人的資源政策 / グローバル化 / 企業経営 / イギリス |
Research Abstract |
平成18年7月に研究会を開催、メンバー全員でこれまでの調査結果について討論し、成果発表の方法について話し合った。7月から平成19年2月にかけて日本企業(製造業および情報産業)5社において管理職、人事担当者、及び従業員を対象に面接調査を実施した。面接調査より得られたデータを分析した結果、以下のような知見が得られた。 国際競争の激化に伴い、日本においても自由な競争を促しながら効率を高める人事政策が求められるようになった。特に業績の向上している今こそ改革を進める好機であるとの認識から、現在「成果主義」を導入する企業が増えているが、画一的な成果主義の導入は、現場に混乱と士気の低下をもたらすケースも多い。組織全体を考えた場合、成果主義は選択的に導入されなければならない。4つの職務階層グループ、すなわち(1)幹部経営者、(2)ゴールドカラー(管理職・専門職、起業家、コンサルタントなど)、(3)ブルーカラーおよびホワイトカラー下級職・サービス業雇用者、(4)フレックス雇用者(期間雇用者およびパートタイム雇用者)、のそれぞれに対して異なった政策が必要である。上位の階層では高い成果基準を設けて成果によって決まる報酬部分を大きくし、職位が下がるに従って成果によって決まる報酬部分を小さくすることが適当である。つまり、(1)と(2)に対しては成果主義の導入が有効である。特に組織の活性化と新たな価値の創造に最も重要な役割を果たすことが期待される(2)に対しては、戦略的プロセスに参加させ、企画を実現する機会を与え、成果に見合った報酬を与えることによって創造的能力を発揮させることができる。一方与えられている権限が小さい(3)と(4)に対しては成果主義の導入は限定的であるべきである。仕事そのものに意味を見出しにくい状況のもとで働くことの多い彼らに対しては、「人間主義的アプローチ」を適用し、社会的欲求(集団や組織に帰属し、同僚や仲間に受容されたいという欲求)に応えることによってモティベーションを高めることができる。(4)はその仕事内容も個人の社会・経済的背景も多様で、一様に論ずることは難しいが、多くの場合、雇用の安定、正社員との格差の縮小などがインセンティブとなる。さらに両国の組織において、職階別に制度を改革するにあたっては、日本型とアングロ・サクソン型、それぞれの優れた点を取り入れていくことが有効である。研究結果は2冊の著書として出版される予定である。
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Research Products
(8 results)