2005 Fiscal Year Annual Research Report
行動遺伝学の手法を援用したパーソナリティ理論の構築に関する研究II
Project/Area Number |
16330133
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大野 裕 慶應義塾大学, 保健管理センター, 教授 (70138098)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安藤 寿康 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (30193105)
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Keywords | 行動遺伝学 / 遺伝と環境 / パーソナリティ / 5因子モデル / NEO-PI-R / TCI / 双生児法 / 国際比較 |
Research Abstract |
今日のパーソナリティ検査を代表する2種類の検査、NEO-PI-R(Costa & McCrae)およびTCI(Cloninger)を、慶應義塾双生児プロジェクトのサンプルを補充し、青年期の双生児約650組を得た。このデータをもとに遺伝因子分析結果の国際比較研究を実施した。 NEO-PI-Rについては、ドイツ、カナダとの共同研究を実施し、日本を含めた3国間でパーソナリティの5因子(neuroticism, extraversion, openness to experience, agreeableness, conscientiousnessの遺伝因子構造が文化的差異を持たない普遍性を持つことを示した。一方環境因子には、若干の文化間差異が見いだされ、それは表現型の5因子とは異なる部分が見られた。一方TCIでも、特に気質3因子(novelty seeking, harm avoidance, reward dependence)アメリカ、オーストラリアのサンプルと比較し、やはり文化を越えた遺伝構造、環境構造の同一性を見いだした。 このように異なる理論的背景をもつ異なるパーソナリティ検査のいずれも、それぞれの表現型を合理的に説明できる遺伝的因子構造が見いだされたことは、これまでの「パーソナリティはいくつの因子から成り立っているか」「その因子の生物学的基盤は何か」という論争に大きなインパクトをもたらす。パーソナリティには、遺伝的に単一単純な因子構造が存在することを仮定することが果たして可能なのか、特に気質と性格の階層構造や、究極の因子構造の存在に対する根本的な疑問と、それを乗り越えるパーソナリティ理論の構築の必要性が示唆され、遺伝子や中間表現型としての神経伝達物質のような神経生理学的指標の導入、ならびに質問紙によらない行動指標からのパーソナリティ測定の必要性が示唆された。
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