Research Abstract |
井上は,Vo Anhおよび中野 張と共同で,記憶を持つ系に対するフィルタリングの理論を展開した.この系は,連続時間の非マルコフ型ガウス過程V_1とV_2により駆動される.これらのガウス過程は,それぞれ記憶の効果を記述する二つのパラメータを持つ.このV_jは,定常増分過程であると同時に簡単なセミマルチンゲール表現を持つという特色を持つ.これらの性質は,パラメータの推定において基本的な重要性を果たす.このV_jに対する明示的なセミマルチンゲール表現を用いて,この系に対するKalman-Bucyタイプのフィルタリング方程式を導く.このアルゴリズムの有効性は,数値的な実験結果により確認される.また,この結果は,ファイナンスの最適投資問題に応用される.すなわち,上の非マルコフ型ノイズにより駆動される記憶を持つ金融市場モデルにおいて,投資家は部分的な情報しか利用できないという状況に対し,最終富の対数期待効用最大化問題を上のフィルタリングの問題の解を用いて求める. 井上は,中野 張と共同で,記憶を持つ金融市場モデルに対する長期間投資問題を研究した.すなわち,井上等により導入された記憶を持つ金融市場モデルに対し,負のべき指数αに対する最終富のべき期待効用関数最大化問題を,無限期間で研究した.まず,非マルコフ型ノイズに対するセミマルチンゲール表現とCameron-Martinタイプの公式を用いて,有限期間での類似のべき期待効用関数最大化問題を解く,次にαの範囲を適当に制限した上で,有限期間の場合の解の形式的な極限が,実際に無限期間の場合の解になっていることを,Riccati方程式の解の解析を通じて示す.このようして得られる最適ポートフォリオは,具体的な表現を持つ.
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