Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷口 雅彦 奈良女子大学, 理学部, 教授 (50108974)
中西 敏浩 島根大学, 総合理工学部, 教授 (00172354)
志賀 啓成 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (10154189)
須川 敏幸 広島大学, 理学研究科, 助教授 (30235858)
左官 謙一 大阪市立大学, 理学研究科, 助教授 (70110856)
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Research Abstract |
タイヒミュラー空間に等長的に作用する群の固定点問題を研究した.Gromovの双曲性をもつ空間(およびその拡張)やヒルベルト空間に等長的に作用する群に関する同種の問題は,幾何学的群論の重要なテーマであり,群の代数的な構造を,幾何的な性質がどのように規定するかが興味の対象となる.この問題をタイヒミュラー空間を舞台に行うことを目標にした.楕円型写像類(モジュラー変換)は,等角自己同型としての実現をもつ写像類であるが,言い換えればそれはタイヒミュラー空間に固定点をもつものである.ニールセン実現問題は写像類群の任意の有限部分群に対して,その固定点の存在を主張するものであった.リーマン面一般の擬等角写像類群に対しては,無限群も許し,タイヒミュラー空間に有界な軌道もつ部分群が固定点をもつこととして拡張,定式化される.この主張の正当性は,Markovicの最近の結果より導くことができる.漸近的楕円型写像類は,エンドの近傍で漸近的に等角写像として実現される写像類であるが,それは漸近的タイヒミュラー空間と呼ばれるタイヒミュラー空間のある商空間に固定点をもつものである(任意の可算群は,このような実現をもつ).したがって,漸近的等角同値類からなるタイヒミュラー空間内のファイバーに作用する群Gは,漸近的楕円型写像類からなる.その軌道の離散性,有界性と固定点の存在に関して,Gの代数的,組み合わせ的な構造を反映した次のような結果を証明した.また,これらの現象には共通の原理が存在し,それは群G上の有界ノルムをもつ位相線形空間を離散的なモデルとして説明した.(1)軌道が離散的であるための条件として,Gが可解群であるならば離散的であるが,階数2の自由群を含むときは離散的であるとは限らない.(2)固定点をもつための条件として,Gが有限群であるならば固定点をもつが,非自明なhomogenous quasi-homomorphismを許容するときは固定点をもつとは限らない.
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