2004 Fiscal Year Annual Research Report
高い量子効率をもつ光電子増倍管の開発と、気球による硬X線偏光観測への応用
Project/Area Number |
16340055
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
片岡 淳 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助手 (90334507)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河合 誠之 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (80195031)
郡司 修一 山形大学, 理学部・物理学科, 助教授 (70241685)
斉藤 芳隆 宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究本部, 助教授 (50300702)
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Keywords | X線・ガンマ線天文学 / 散乱型偏光検出器 / 気球実験 / PMTアセンブリ / 真空放電対策 / 偏光ビーム試験 |
Research Abstract |
本年の研究業績は、以下の3点に要約される: (1)気球搭載用光電子増倍管(PMT)アセンブリの設計・開発(2)PMT量子効率の大幅な向上(3)放射光実験施設におけるプロトタイプ偏光検出器の性能評価。以下では、これらを順を追って説明する。気球に搭載する装置は動作環境が真空に近いため、放電・熱や振動に対して細心の注意を払う必要がある。本年の開発では、PMTの直後に昇圧電源を抱き合わせることで高圧ケーブルの引き回しをなくし、電力は0.6W、重量は僅かに230gという気球搭載型PMTアセンブリを完成させた。10月には気球環境を想定した熱真空試験も実施して、放電が全く起こらないことを実機で確認した(1)。しかしながら、本PMTアセンブリは集光力において我々の目標とする理想値(0.5光子/キロ電子ボルト)に僅かに届かず、PMT自体の量子効率を上げることが次の課題となった。我々はPMTのガラスチューブ側面に反射性の高いシートを巻きつけることで、カソードを透過した光子を効率よく捕らえ、実質的な量子効率を従来品の40%以上も向上する方法を考案した(2)。この手法は非常にユニークであると同時に、宇宙物理に限らず素粒子・原子核実験等の様々な分野においても応用が可能である。PMTアセンブリの開発と量子効率の改良手法については、本年度の日本物理学会・天文学会で片岡、郡司他が発表を行い、大きな反響を得た。さらに、気球搭載用のプラスチックシンチレータを20ユニット開発し、このうち7ユニットを上記のPMTアセンブリと組み合わせることで搭載品とほぼ同じ構成をもつプロトタイプ偏光計を製作した。これを用いて昨年12月には高エネルギー加速器研究機構(KEK)の放射光実験施設(Photon Factory)において硬X線偏光ビームを用いた試験を行い、30,50,70キロ電子ボルトの各エネルギーについてシミュレーションで期待される偏光検出性能が実現できることを検証した(3)。本年7月には、これら試験結果について米国の検出器学会SPIEにおいて口頭発表を行う予定である。
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Research Products
(6 results)