Research Abstract |
1.米谷は,DOブレーンの力学を量子の理論として定式化する試みを開始した。この試みは,Dブレーンの力学を特徴づける最も重要な性質である,開-閉弦双対性の非摂動的な理解につながると期待できる考え方として,米谷が提唱した理論的可能性である。具体的には,DOブレーンの配位空間における非相対論的な有効理論として知られている超対称Yang-Mills量子力学を,第2量子化された場の理論に書き直すための新たな枠組みを探求した。それにより,通常の粒子の量子統計性が連続ゲージ群に拡張されていることを取り入れた場の理論の基本的な性質を明らかにして,Dブレーンの場理論に向けての端緒を開き,さらに大N極限におけるM理論の場の理論に向けた考察を進めた。2.風間は,AdS/CFT対応の本質の解明を目標として,これまで理解が遅れている弦理論側について研究し,以下の成果を得た。Ramond-Ramondフラックスを含む曲がった平面波背景場中の超弦理論は,AdS/CFTの一つの極限として重要な意味を持つが,これまで,弦理論の要である共形不変性を犠牲にしたlight-coneゲージでしか量子化ができず,相互作用の解明等に困難が生じていた。共形不変性を保つゲージでは理論が非線性になるが,ヴィラソロ代数をスペクトル生成代数として捉え,ダイナミックスを表現論に置き換えることができることに着目して,位相空間変数での量子化を行い,量子化されたヴィラソロ演算子を構成した。これは共形不変ゲージでの理論解明の基礎となる重要性を持つものである。4.加藤は前年度に提唱した新たな共変ゲージについて,散乱振幅の一般構造とゲージ不変性について解析し,ゴースト数の違うセクターにおけるヌル場の非結合性の一般構造を明らかにした。また,格子上の超対称性を実現する定式化を目指して,いくつかの試みを行い,格子上のライプニッツ則に関する一般的なNo-Go定理を確立した。4.橋本は,弦理論で発見された重要な対応原理であるゲージ,重力対応を用いて,量子色力学における基礎課題であるクォークの質量とハドロンの質量の関係の謎を明らかにした。また,量子色力学の基本励起である「QCD弦」を古典に理解する方法を与え,対応する古典解から安定性を示した。
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