2005 Fiscal Year Annual Research Report
HERMESによる陽子と中性子の新しいスピン構造の測定
Project/Area Number |
16340070
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
柴田 利明 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (80251601)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮地 義之 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助手 (50334511)
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Keywords | クォーク / 陽子 / 中性子 / スピン / グルーオン / 電子 / 深非弾性散乱 / 漸近的自由性 |
Research Abstract |
平成17年度には、ドイツ・ハンブルクのDESY(ドイツ電子シンクロトロン研究所)において、高エネルギー電子と陽子標的の深非弾性散乱実験を行い、そのデータを解析して論文として発表した。HERMESと呼ぶ11カ国による国際共同研究である。 陽子と中性子(総称して核子と呼ぶ)は基本的にクォーク3個から構成されているので、従来は、核子のスピン1/2はクォークのスピン1/2の重ね合わせによるものと考えられていたが、約20年前に、クォークのスピンは核子のスピンにわずかしか寄与しない、という実験結果が出たので、現在では、世界の主要な研究所のほぼすべてにおいて、この「核子のスピンの問題」を解明するために実験が行われている。HERMESもその1つである。 平成17年の成果は、特に、横偏極の陽子標的、すなわち電子ビームの進行方向に垂直な方向にスピンが向いた陽子を標的として深非弾性散乱を行った。そして、散乱された電子のみならず、発生したハドロン(パイ中間子、K中間子)もリング・イメージング・チェレンコフ検出器を使って粒子識別をして観測した。散乱後の電子とハドロンの角度相関を測ることにより、標的の偏極の方向に依存する非対称度があることを発見した。そして、角度相関の詳細な解析により、コリンズ効果とシバーズ効果を分離することに成功した。コリンズ効果は、いまだ測られていない基本的なスピン構造関数の決定へ道を拓くものである。一方、シバース効果は、クォークの軌道角運動量の核子スピンへの寄与と関係していることが理論的に指摘されている。HERMESの研究により、核子のスピンの問題を解明するための新しい手法を開拓したということができる。
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Research Products
(6 results)