2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16340076
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
横山 順一 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (50212303)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
釣部 通 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助手 (60335338)
山口 昌弘 東北大学, 大学院理学研究科, 教授 (10222366)
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Keywords | 初期宇宙 / インフレーション宇宙論 / 超重力理論 / 初期密度ゆらぎ / 有限温度の場の理論 / 非平衡場の理論 / 宇宙背景輻射 / モジュライ問題 |
Research Abstract |
本年度は本研究課題に関して特段目新しい観測結果が報告されなかったため、宇宙進化史を明らかにする上で重要な、いくつかの基礎的諸問題に取り組み、研究成果を挙げた。 まず、初期宇宙のインフレーションを引き起こす素粒子論的機構としては、超重力理論によるモデル化が重要であるが、インフレーションを起こすポテンシャルエネルギー源として、FタームによるものとDタームによるものが長い間知られていた。前者に関しては、代表者らによるモデルが知られていたが、パラメタの微調整を必要とするものであった。一方後者によるモデルはこのような微調整は必要とされないが、宇宙背景輻射の精細観測データが得られるにつれ、Dタームインフレーション後に生成されるコズミックストリングが過剰な温度ゆらぎを誘引してしまうことが判明し、このモデルも危機に瀕した。われわれは本年、超重力理論のケーラーポテンシァルに自然に存在する高次項を活用することによって、このコズミックストリングのエネルギースケールを十分下げることができることを示した。また、スーパーポテンシャルの高次項を活用することによってこの問題を解決する別のモデルも提唱した。これはインフレーションをおこすスカラー場をスカラーニュートリノと同定でき、バリオン非対称の生成も同時に説明できる、優れたものである。 一方、インフレーション後の再加熱過程の研究として、従来インフレーションをおこすスカラー場の質量よりも温度が高くなると、この場は崩壊できず、再加熱が中断されることが主張されていたが、非平衡系の場の理論を用いることによってこのプロセスを正しく解析したところ、このような中断は起こらないことを見出した。また、再加熱温度のより正しい表式を導出し、その宇宙論的意義を明らかにした。 観測データと関わりのある研究としては、宇宙背景輻射の温度ゆらぎと相関ゆらぎの双方の精細観測データが得られた暁には、これらを用いてCosmic Inversion法によって独立に再構築した初期ゆらぎのスペクトルが一致するという条件から、初期ゆらぎのスペクトルによらない形で宇宙論的パラメタの値を制限することができることを示した。そして、プランク衛星によって得られると期待される観測データからどのような制限が得られるかを求めた。
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Research Products
(7 results)