2005 Fiscal Year Annual Research Report
強相間電子系における光励起状態の位相緩和ダイナミクス
Project/Area Number |
16340085
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岩井 伸一郎 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (60356524)
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Keywords | 強相関電子系 / 光誘起相転移 / 位相緩和 / モット絶縁体 / 超高速分光 / 縮退4光波混合 |
Research Abstract |
前年度までに製作を完了した、2パルス型縮退4光波混合の測定光学系と、温度可変試料冷却装置を用いて、一次元モット絶縁体[Ni(chxn)_2Br]Br_2における位相緩和ダイナミクスの測定を10-300Kの広い温度領域で行った。これまでに、強励起下(8μJ/cm^2)において、吸収スペクトルの線幅から予想される値よいも長寿命の位相緩和が現れることを明らかにしている。この現象は、五味、高橋らによって予測されているホロン-ダブロンクラスターの生成(Phys.Rev.B72,045129(2005))に対応するものと考えられるが、今年度は、さらに、その温度依存性において、特徴的な振る舞いを新たに見出した。4光波混合の信号の減衰は、全温度領域において1ps以下の超高速成分と数ピコ秒のやや遅い成分の足しあわせで再現できる。このとき、遅い成分の温度依存性は、光学型格子振動との相互作用によって説明できる。このことは、吸収スペクトルの線幅の温度依存性と完全に符合する。ところが、サブピコ秒の速い成分は、まったく異なる依存性を示し、光学フォノン以外との相互作用によって位相緩和が起きていることを示す。高速成分の温度依存性が磁化率の温度依存性とよい一致を示すことから、位相緩和が、スピン波励起であるマグノンの放出に関係していることが示唆される。 さらに、強相関電子系物質の電子構造パラメータ(電子格子相互作用やトランスファーエネルギー)を効果的に変化させる方法として、圧力(静水圧)を印加する方法が知られているが、超高速時間分解分光に適用した例はない。圧力印加下かつ低温下における超高速時間分解分光法の試みとして、二次元有機導体((BEDT-TTF)_2X)の圧力印加下のダイナミクス測定に成功した。
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Research Products
(4 results)