Research Abstract |
低次元金属においては,電子-電子,電子-フォノンなどの相互作用の影響が顕著に現れ,密度波,超伝導などの興味深い現象が起こる。本研究では,一粒子スペクトル関数を直接得ることのできる実験手法である角度分解光電子分光と,超高分解能振動分光法により,結晶表面に形成された低次元金属の物性研究を進めることを目的としている。本年度は,研究の第一年度として,装置や手法の精微に重点を置き,それと並行して,興味深い低次元金属のFermi面近傍電子状態の測定および物質探索を進めた。 装置整備としては,極低温用試料マニピュレータの開発を行った。これは,超高真空下において試料を10Kまで冷却可能であり,同時に精密な2軸回転と3軸並進が可能なものである。限られたスペースで精密2軸回転をするのがかなり難しいため,ギヤ駆動方式,ワイヤ駆動方式,ピエゾ・モーター方式などいくつかの駆動機構を検討し,ワイヤ駆動方式により所記の性能が得られる見通しを得た。また,低次元金属のフォノン分散の測定と電子状態との関連を検討するための手法として,第一原理電子状態計算に基づくフォノン分散計算を行うためのハード・ソフトウェア整備を行った。 In/Cu(001)における電荷密度波ギャップの温度依存性の精密測定を行い,この系の電子系の振る舞いが弱結合理論でよく説明できることを見いだした。また,TI/Ge(111)表面の電子状態の測定を行い,被覆率,温度処理により異なる構造を有する表面が得られ,これらは,1次元金属および2次元金属であることを見いだした。
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