2004 Fiscal Year Annual Research Report
X線磁気回折による軌道整列系ペロブスカイトチタン酸化物のd電子基底状態解明
Project/Area Number |
16340098
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
伊藤 正久 群馬大学, 工学部, 教授 (90124362)
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Keywords | X線磁気回折 / X線磁気散乱 / 強磁性体 / スピン磁気形状因子 / 軌道磁気形状因子 / スピン密度分布 / 軌道整列 / ペロブスカイトチタン酸化物 |
Research Abstract |
本研究の目的は、軌道整列系ペロブスカイトチタン酸化物のひとつであるYTiO_3の物性解明を、X線磁気回折という新しい実験手法を用いて行なうこと、である。X線磁気回折は、磁気形状因子(これは磁気モーメントの実空間における密度分布を逆格子空間へフーリエ変換したもの)を、そのスピンモーメント成分と軌道モーメント成分へ分離して測定できる、現時点では唯一の実験手法である。 本物質は温度30K以下で強磁性となる。結晶構造はorthorhombicで磁化容易軸はc軸、困難軸はb軸である。温度5Kにおける磁化測定によれば、各軸方向で磁化が飽和するのに必要な磁場は、a軸では0.6T、b軸では2T、c軸では0.1Tである。本物質の電子基底状態を調べるためには、なるべく低温で、かつ、磁化を飽和させて実験を行なう必要があり、温度5K程度、磁場2Tの実験条件を実現することを本年の目標とした。当初は磁石部・冷凍部一体型の超伝導磁石を想定していたが、本年度前半に各種超伝導磁石を見学し、また、放射光を用いた予備実験を行なった結果、磁石部と冷凍部を切り離す構造である方が好ましいという結論に達した。これは、本実験が本質的には単結晶のX線回折実験であり、結晶方位の微調整が重要であることによる。2T発生可能な電磁石、および、5K程度まで冷却可能な冷凍機の、それぞれの設計を行ない、発注した。本年度末に納入の運びである。 上記、磁石・冷凍機の設計ならびに発注と並行して、小型磁石(0.6T程度)と小型冷凍機(20K程度)を用いて、ac面内磁化の場合のみに限定されるが、X線磁気回折の予備的な実験を行ない、軌道磁気形状因子ならびにスピン磁気形状因子を測定し、以下の結果を得た。(1)ac面内の磁化方向では有意な大きさの軌道磁気形状因子が測定されなかった。(2)測定されたスピン磁気形状因子は、モデル軌道を用いた計算と概ね一致した。
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Research Products
(1 results)