2006 Fiscal Year Annual Research Report
X線磁気回折による軌道整列系ペロブスカイトチタン酸化物のd電子基底状態解明
Project/Area Number |
16340098
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
伊藤 正久 群馬大学, 工学部, 教授 (90124362)
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Keywords | ペロブスカイト酸化物 / 軌道整列 / X線磁気回折 / スピン磁気形状因子 / スピン密度分布 |
Research Abstract |
高度化したX線磁気回折実験システム(温度5K、磁場2T)を軌道整列系強磁性体YTiO_3へ適用した。従来の実験システムでは最大磁場が0.85Tに制限されていたため、YTiO_3のb軸、あるいは、b軸成分を含む方向へ磁化を飽和させた実験が不可能であったが、本高度化によりそれが可能となった。これにより、YTiO_3の任意の方位へ磁化を飽和させた状態でのX線磁気回折実験によるスピン磁気形状因子測定が可能となった。昨年度まではh01シリーズのみの逆格子点でのスピン磁気形状因子測定しか行なえず、これから得られるスピン密度分布も2次元のb軸投影図にとどまっていたが、本年度はhk0、および、0k1シリーズの逆格子のスピン磁気形状因子測定を行なえるようになり、3次元のスピン密度分布の直接観測を目指した。短時間でなるべく多数の逆格子点の実験を可能にすべく、昨年度は高計数率半導体検出器系の整備により測定時間の短縮化を行なったが、本年度は冷凍機先端に試料方位微調整用の2軸回転機構を新たに開発・整備し、単結晶試料セッティング時間の短縮を図った。このようにして得られた、hk0、h01、0k1シリーズの数十点の逆格子点のスピン磁気形状因子に、最大エントロピー法を適用し、実空間における3次元スピン密度分布を得ることに成功した。 YTiO_3の磁性は、基本的には、Tiの1個の3d電子が担っており、その3d電子は立方対称に配位している酸素イオンの結晶場でt2g軌道にあり、それが規則的に配列していると考えられている。しかし、その規則配列したt2g軌道を実空間で観測した実験例は今までなかった。本実験で得られたTiサイトの実空間スピン分布は見事にt2g軌道を示しており、YTiO_3の整列した3d電子軌道を実空間で直接観測することに初めて成功した。
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Research Products
(3 results)