2004 Fiscal Year Annual Research Report
P電子系およびナノ構造物質における強相関第一原理手法による電子状態の解明
Project/Area Number |
16340100
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
今田 正俊 東京大学, 物性研究所, 教授 (70143542)
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Keywords | 第一原理電子状態計算 / 強相関電子系 / 物質科学シミュレーション / 密度汎関数法 / 経路積分繰り込み群法 |
Research Abstract |
本課題は密度汎関数法と経路積分繰り込み群法を組み合わせたハイブリッド手法を開発し、電子相関の強い系への応用、特にp電子系やナノ構造への応用をめざしている。今年度までに確立された具体的な計算の手続きは以下のようなステップで構成されている。 (1)密度汎関数計算(局所密度近似)により、遷移金属酸化物や有機化合物のバンド計算を行ない、高エネルギーの大域的電子構造を求める。 (2)GW法および制限された局所密度近似を組み合わせることで、高エネルギー部分の電子に起因する遮蔽されたクーロン相互作用と自己エネルギーを求め、高エネルギー側の電子の自由度を消去し(downfoldingと呼ぶ)、低エネルギー側の自由度だけが残された有効電子模型が導かれる。 (3)downfoldingで求められた有効模型を、精度の高い経路積分繰り込み群法で解く。 開発されたアルゴリズムはまずストロンチウム・バナジウム酸化物(Sr_2VO_4)の電子状態計算に応用された。この物質では局所密度近似では良い金属、ハートレーフォック近似では強磁性絶縁体が予測されるが、実際は金属絶縁体転移に極めて近い反強磁性的な絶縁体であり、いずれの予測とも合致せず、電子間相互作用の効果が顕著である。すなわちこの物質は強相関電子系の電子状態計算の精度を試すベンチマークとなる。我々の方法を適用した結果は、Sr_2VO_4が反強磁性絶縁体と金属の相境界の近傍にあることを示し、現実の物性と良い一致を示す。さらに実験的には解明されていないスピン、軌道秩序についても予測が可能になった。このように、この新たなアルゴリズムは、電子間相互作用の効果の大きな強相関電子系に有効な電子状態計算手法であることが実証されたと判断できる。
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Research Products
(10 results)