2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16340101
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
廣井 善二 東京大学, 物性研究所, 教授 (30192719)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山浦 淳一 東京大学, 物性研究所, 助手 (80292762)
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Keywords | パイロクロア酸化物 / 超伝導体 / ラットリング / 遷移金属酸化物 / フラストレーション / 強相関電子系 |
Research Abstract |
βパイロクロア型オスミウム酸化物超伝導体AOs_206について、試料合成、構造評価および物性測定を行った。A元素としては現在までに3つのアルカリ金属元素Cs、Rb、Kを含む酸化物が合成されており、それぞれ超伝導転移温度πが3.3K、6.3K、9.6Kである。以前に報告したαパイロクロア酸化物Cd_2Re_2O_7のT_c=1.OKと比べると最大一桁T_cが上昇したことになり、何らかの新しい超伝導機構が働いていることを予感させる。また、電気伝導性を担う5d電子を供給するオスミウムイオンはいわゆるパイロクロア格子をなし、これが3次元フラストレート格子であることから、何らかの新しい物理の可能性を期待させる。 本年度の研究において、これまで純良な試料が得られていなかったCsOs_20_6およびRbOs_20_6について良質な単結晶の作製に成功した。これを用いて、電気抵抗、磁化、比熱等を測定した結果、CsではBCS的な弱結合超伝導であり、Rbでは若干、強結合となっていることが分かった。さらにKでは強結合性が強くなっていることから、T_cの上昇と共に超伝導性が弱結合から強結合へと劇的に変化することを突き止めた。この変化はあきらかにAのラットリングのエネルギー低下と関係しており、ラットリング振動が超伝導の機構に重要な役割を果たしていることが分かる。 さらにCs単結晶において大きな磁気抵抗効果を観測した。これは大きな異方性を有し、フェルミ面の特異な形状を反映していると考えられる。また、物材機構の寺嶋らによってドハースファンアルフェン効果の測定が行われ、播磨によるバンド計算の結果とよい一致をみた。得られたバンドマスの増強は3-4であり、比熱測定の結果とよく一致する。また、平均自由行程も500-1000nmと非常に大きいことが分かった。この物質は極めてクリーンな系であり、伝導電子とラットリングの相関を研究する上での重要な舞台を与える。
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Research Products
(5 results)