2006 Fiscal Year Annual Research Report
銅酸化物高温超伝導体における電子の自己組織化と輸送現象
Project/Area Number |
16340112
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Research Institution | Central Research Institute of Electric Power Industry |
Principal Investigator |
安藤 陽一 (財)電力中央研究所, 材料科学研究所, 上席研究員 (90371286)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小宮 世紀 (財)電力中央研究所, 材料科学研究所, 主任研究員 (80371293)
瀬川 耕司 (財)電力中央研究所, 材料科学研究所, 主任研究員 (20371297)
小野 新平 (財)電力中央研究所, 材料科学研究所, 主任研究員 (30371298)
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Keywords | 銅酸化物高温超伝導体 / 自己組織化 / 輸送特性 / 電荷移動励起 / ホール係数 / 電子ドープ / スピン励起 |
Research Abstract |
銅酸化物高温超伝導体中では電子が強い相関を持つために、電荷ストライプの形成など「電子の自己組織化」と考えられる現象が起こることがわかってきた。さらにこの電子の自己組織化現象が、特異な絶縁体状態や超伝導ギャップの不均一性など、銅酸化物に特有の電子状態を生じさせる上で鍵を握っているらしいこともわかってきた。そこで本研究では、特殊な環境下での輸送特性の測定を主たる手段として、銅酸化物における電子の自己組織化現象の様々な側面を明らかにするべく実験を行った。本年度に得られた主な成果は以下の通りである。 1.La_<2-x>Sr_xCuO_4単結晶とPr_<1.3>La_<0.7>CuO_4単結晶のホール係数を1000Kまで測定し、高温でのホール係数の温度依存性から電荷移動励起エネルギーが求められることを明らかにした。さらに、電荷移動励起を考慮したモデルによってホール係数のドープ量依存性を解析することにより、La_<2-x>Sr_xCuO_4中で起こる電子の自己組織化によってできる2種類の相の寄与を分離できることを明らかにした。 2.銅酸化物に電子をドープしたときと正孔をドープしたときの自己組織化の起こり方の違いを調べるために、YBa_2Cu_3O_y系銅酸化物に電子をドープすることを試みた。その結果、Baを一部Laで置換し、さらに還元処理を行って酸素量を減らすことにより、この系に実際に電子をドープできることを明らかにした。さらにこの試料を用いて、絶縁体状態を横切って正孔ドープから電子ドープへ変化するときの輸送特性の振舞いも明らかにした。 3.高品質の大型Pr_<1.3-x>La_<0.7>Ce_xCuO_<4-δ>単結晶を作製して中性子散乱実験を行った結果、高エネルギー領域のスピン励起が特異な分散を持つことを明らかにした。また、この物質の超伝導化に必要な還元熱処理の果たす微視的な役割を解明した。
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Research Products
(6 results)