Research Abstract |
固液界面における酸化還元反応によって金属樹が生成する過程は,非平衡過程であり,磁場による著しい形状変化を示すことを明らかにしてきた.特に金属亜鉛-銀イオン系で2次元的に成長させた銀樹は,反応に関与する化学種すべて反磁性種であるにもかかわらず,磁場に対して約30度配向する現象が観測された.本年はこの現象について詳細な検討を行った.まず,他の系への展開として,常磁性種を含む系についても観測を行った.金属銅-銀イオン系では,磁気力が作用せず,重力の影響も受けにくい均一磁場条件の水平型ボア下では,金属亜鉛系と同様に銀樹が配向することがわかった.このことから,この配向現象は,磁気力によるものではないことがわかった. また,CCDカメラを用いた"その場"観測の結果では,高さ0.5mm程度の銀樹が歳差運動をしており,その速さおよび頻度は,銀イオン濃度および磁場強度に依存していることがわかった.また,溶液が磁場によって激しい対流が起こっていることがわかった.この現象は化学ポテンシャルが力学的エネルギーに変換している現象であり,学問的にも興味深い.現在のところ,溶液中の銀イオンに対するローレンツ力によるものと考えている.詳細について,引き続き研究を行っているところである. 歳差運動と銀樹の配向の関係については,歳差運動が起こりやすい条件では,配向の角度が磁場と平行に近づく傾向が見られたことから,基本的には形状磁気異方性によって配向し,ローレンツ力による対流で配向の角度の変化あるいは乱れが若干生じていると考えられる.形状磁気異方性による配向について,定量的に解析するために反磁性種として試料そのものに磁気異方性がないアモルファス状態のパラフィンを用いて,磁気力による浮遊状態で配向を観測し,解析を進めているところである. 以上のいくつかの結果について,論文に受理済み,あるいは投稿中の状態である.
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