2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16350021
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小松 紘一 京都大学, 化学研究所, 教授 (70026243)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村田 靖次郎 京都大学, 化学研究所, 助手 (40314273)
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Keywords | 分子手術 / 水素分子 / 開口フラーレン / 熱反応 / 硫黄原子 / 光化学反応 / 質量分析 / 核磁気共鳴 |
Research Abstract |
以下に述べる「分子手術」とも呼ばれる手法を用いて、水素分子を内包したフラーレン、H2@C60の合成に初めて成功した。まず、開口フラーレンを合成し、これに水素分子を導入した。すなわちフラーレンC60と1,2,4-トリアジン誘導体との液相熱反応を利用してC60表面に8員環の開口部を設け、さらに光化学的な酸素酸化反応によってこの開口部を12員環に拡大、さらに、電子供与体であるTDAEの共存下、単体硫黄と反応させることによって開口部に硫黄を入れて13員環とした上で、高圧水素を作用させることによって、水素分子を100%内包した開口フラーレン(H2@ATOCFと略称)を合成した。このH2@ATOCFはMALDI TOF質量分析において、レーザー強度を高めると、気相において自発的に開口部を閉じることが認められた。次いで、この開口フラーレン、H2@ATOCFの開口部の硫黄原子を、スルフィドに酸化した後、可視光線の照射による光化学反応によってSOとして脱離・除去して、内包した水素分子を保持したまま、12員環開口体へと変換した。さらに、開口部の2個のカルボニル基をマクマリー反応によって結合させることにより、やはり内包水素を100%保持したまま、8員環開口体へと変換した。このように開口部を縮小することにより、内包された水素分子の放出は困難となり、最終的には、水素を内包した8員環開口体を真空中で熱反応(340℃)にかけることにより、分子内転位および脱離反応によって、67%収率で、目的とする水素内包フラーレン、H2@C60を合成することに初めて成功した。このH2@C60は9%だけ、空のC60を含んでいたが、リサイクル液体クロマトグラフィーにより、100%純粋なH2@C60に精製することができた。こうして初めて合成されたH2@C60は、質量分析、核磁気共鳴、赤外ならびに紫外スペクトルなどによって、その性質を明らかにした。内包された水素分子と外側のフラーレンのπ共役系との間の電子的相互作用は小さく、Van der Waals相互作用の影響の方が大きいことが示された。
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Research Products
(4 results)