2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16350031
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
巽 和行 名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 教授 (10155096)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大木 靖弘 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 助手 (10324394)
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Keywords | ヒドロゲナーゼ / ニッケル / 鉄 / チオラート / 一酸化炭素 / 多核錯体 / 金属酵素 |
Research Abstract |
チオラートNaS^tBuの溶液に対して低温でFeBr_2(CO)_4,NiBr_2(EtOH)_4を順次加える反応系から、自己集合的にFe-Ni-Ni-Fe四核錯体[(CO)_3Fe(μ-S^tBu)_3NiBr]_2(1)が得られることを見いだした。錯体1は[NiFe]の二核単位が置換活性なBrで架橋された二量体とみなすことができ、チオラート架橋[NiFe]二核錯体の有用な前駆体になると期待される。錯体1に対し2当量のNaSPhを低温で反応させたところ、Brとベンゼンチオラートの置換反応が進行し、Ni-Fe間を架橋するチオラートの1つが鉄上の末端配位子となることで、四核錯体[(CO)_3Fe(S^tBu)(μ-S^tBu)_2Ni(SPh)]_2(2)が生成した。過剰のNaSPh存在下でも錯体2の四核骨格は安定であり、Fe-Ni-Ni-Feの四核からNiFe二核単位への開裂は起こらない。チオラートによるNi-Ni間の架橋を防ぐ目的で、嵩高い置換基を持つNa(SDmp)(SDmp=2,6-dimesitylphenylthiolate)を1に反応させた場合には、二核錯体(CO)_3Fe(μ-S^tBu)_3Ni(SDmp)(3)が得られた。錯体3はニッケル-鉄間の三つのチオラート架橋を保持したまま末端に嵩高いDmpチオラート配位子を持ち、結果としてニッケル周りは特異なtrigonal pyramidal構造を強制されている。そこで、この歪みがかかったニッケル部位を利用したドナー分子との反応を検討した。[NiFe]ヒドロゲナーゼの反応はCOによって阻害されるが、その際COはニッケルに配位すると報告されている。錯体3は1気圧のCOと速やかに反応し、平面四配位Niを形成するとともに1つの架橋チオラートが鉄末端に移動した二核錯体(CO)_3Fe(S^tBu)(μ-S^tBu)_2Ni(SDmp)(CO)(4)を与えた。この反応は可逆であり、減圧下で錯体3を再生する。錯体4はCO阻害型[NiFe]ヒドロゲナーゼの初の構造モデルであると同時に、立体的制約により歪んだニッケル上において配位構造を変えながらドナー分子を脱着させる点で興味深い。
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Research Products
(6 results)